朝、駅へ向かう道で、僕の前を歩いていた人は、 日曜だというのに、黒のスーツを着ている。 名前も住所も知らないし、 今までに見た覚えのある人でもない。 ところが、夜、駅のホームで、 同じ電車の隣の車両から降りてきた。 間違いない。朝の人だ。 階段を下り、僕の先を歩いていく。 その人の少し疲れているような背中の後を 同じペースで歩いてみる。 気づいていない背中は、ぼくの家の方へ進む。 しかし、家の横の道まで来た時に、 向こうはまっすぐ、ぼくは右へ。 ぼくは、微かに右手の親指を立てる。 ぼくらは、労働者なんだ。