「宣言」では帰る時間だ 渋谷駅の近く 警備員の男が、声をからし 「不要不急の外出は避けてください」 と叫んでいる その隣で ウサギの耳をつけたミニスカートの女の子が 「一時間、2800えん」と書いてあるボードを 笑顔で持ち上げている どちらも必死だ
2階に上って、窓際に座る 目の前に道がある 右側の足下から、左側の頭上へ 音もなく甲州街道が走る 車道を車がいく 歩道を人がいく ミャンマーの街で弾圧があり ガザの街で戦闘があり インドの街では人が死んでいく 呑み屋支援のビールも飲めず 歩き疲れたオレは、ワッフルコーンを食う なにも悪いことをしていない なにもいいこともしていない
期待してたわけじゃない そんなうまい話あるわけない パッケージだって、あんまりいけてないし 類似品で凝りていたはずだし でも、日本初というから ちょっとだけ、安くなってたから ちょっとだけ、その気になっちゃった 愚かだ
家を出るとき、マスクをつける 毎朝の行い もはやありふれたふるまい それがふつうで生きている 会社を1年で辞めた人 ぼくはマスクなしのその人を知らない ぼくらはニュー・ノーマルを受け入れた それがふつうで生きている いま生まれてくる人は 靴をはくように マスクをして出かける それがふつうで生きる そのふつうがノーマルになったとき ニュー・ノーマルな人間は マスクをつけて生まれてくる それがふつうで生きる
大晦日の日 夕暮れの先っぽが現れ始めるころ 広い駐車場に、タクシー3台 どの運転手も眠りの中にいる 窓際の狭いカウンターに、初老の労働者 発泡酒をゆっくりと流し込んでいる そして、淡々と勤めをこなす在留外国人 この人たちの力で、 2020年は過ぎてゆく
正月明けの鈍い通勤 寒い 駅に向かう道に 掃除する銀行員たちがいた 開店にはずいぶん早い ビシッとしたスーツに 粗末な掃除道具 その不釣り合いの滑稽と まじめくさった勤勉 それはまったく嘘くさい でも、他に何ができるっていうんだ
noteをひらく 驚いたことに、去年の11月以来だ 「なんで?」と自分に聞いてみる 「時間がなかった…」と答えるしかない 「最低のオトナ」というしかない
帰宅する 手を洗う 風呂を沸かす 服を脱ぐ 風呂場に入る 頭と体を洗う 風呂につかる ああーっ 幸せだ
天気はいいが、出勤 駅のホームは、がらんといている 電車がご同朋を運んでくる ドアが開く 目の前のシートに ごろんと横たわる男 気持ちよさそうに眠っている 世間の眼やコロナの刃も 今この瞬間の彼には無力だ どれだけ泥酔していても ぼくにはきっとできない あの幸せを味わうことはできないのかもしれない トランプなら、弱虫と呼ぶだろう 呼ぶがいい
厄介な映画だ。グザヴィエ・ドランは、今回も彼ならではの、繊細だけど、芯のある映像をみせる。その表現は、いつにもまして強力。いい映画と言うのに、なんのためらいもない。役者としての魅力も十分だ。それでも、厄介というのは、やっぱり題材。男と男の恋愛というのは、率直にいって、あまり得意ではない。 いっぽう、このヒリヒリは尋常ではない。リアルだ。人が人を好きになり、求め、恐れ、欲する。その気持ちは、心を打つ。愛はたしかに存在するし、その
しばらく忘れていたマスクを取りだす スーパーで「夏用のマスク」と宣伝していたやつだ 風通しのいい素材で、鼻の部分にワイヤーがはいっている けっこう快適だった ところが、これをつけて外へでてみると、頬が寒い 寒い? いつからマスクは防寒具になったのだろう これ
朝、駅へ向かう道で、僕の前を歩いていた人は、 日曜だというのに、黒のスーツを着ている。 名前も住所も知らないし、 今までに見た覚えのある人でもない。 ところが、夜、駅のホームで、 同じ電車の隣の車両から降りてきた。 間違いない。朝の人だ。 階段
手を洗う 石鹸を泡立てるに蛇口をひねる こすってる間 ついつい水を出しっ放しにする 悪いことしてる気がするから 慌てて石鹸をこねる 中途半端なことになる これ
ANAインターコンチネンタル・ホテルのトイレに入った。 ハンド・ドライヤーは使用中止で、紙タオルがおいてあった。 ちょっと前までだったら、使い捨てはもったいない気がしていたが、 いまや歓迎である。 手を拭き丸めて、引き上げる途中で、ゴミ箱へ投げる。出口のドアを閉める横目に、紙はゴミ箱の端に当たって跳ね、こぼれ落ちてたのがみえた。 後ろから、人が続いてるし、せっかく手を洗ったばかりだから、勘弁してもら
いろいろ複雑だし、リクツを詰めていくところと気にしないところの塩梅を飲み込むのが厄介で、ちゃんと話についていけたか心許ない。 しかし、なにしろみてておもしろい。全編言葉の意味がわからなかったとしても、楽しめたんじゃないかな。 どんどんめくるめく世界に巻き込まれ、戸惑っているうち、次の謎が襲ってくる。とはいえ、主人公たちにそれぞれの魅力があるので、放っておけず、一生懸命ついて行って、一緒に翻弄されるしかない感じ。 見終わったとき、心底ほっとする。そして、もう一度、
位置がよかったのかな 都会の明るい夜でも、しっかり愛でることができた すこしひんやりした空気も手伝って、 市民を詩人に変える ふだん下ばかり見てる人の眼を上に向かせるのだから、 すごい引力だ サッシ越しに、月を眺めながら、 ニール・ヤングの「ハーヴェスト・ムーン」をながした