シュピナートヌィ・サラート・ス・ヨーグルタムの休日

中国に行くことになった時は、
ワクワクしたな。
東洋のことは、まったく知らなかったけど、
それまでの毎日には限界を感じていたからね。

だから、向こうについて、ルートから外れてしまった時も、
なんか楽しかったよ。                        市場に迷い込んでしまったようで、
見えるもの、聞こえてくるもの、それに匂い、
すべてが新しくて、好奇心が刺激された。

ふと気がつくと、あいつはすぐ横にいた。
見るからに弱々しい感じて、
オレにすがりついてきた時だって、
追っ払う気にもなれなかったんだ。

しかし、みるみるうちに、ヤツは力をつけ、
いつのまにか、のさばりだした。
それどころか、他の連中に取り入ることを覚えた。
体が弱そうな奴や持病をもってる奴、
警戒心を持たない奴なんかをターゲットにした。

あとは、ご存知の通り。                       あいつすっかり調子に乗って、                    こわいものなしで、暴れまくっている。
もうオレのことなんか憶えてもいないだろう。

実を言えば、はじめのうち、ちょっと得意にもなった。
なんせ自分が面倒みたヤツが、どんどん広がっていくんだからな。
とても口には出せないが、
自分の能力が認められたような気がしたものだよ。           

まあ、ことこうなっちゃ、ヤツは世界のお尋ね者。
いつか誰か、オレのところへも手が伸びるとは覚悟してたよ。
ジタバタしたってむだだから、                    休日を気取って、しけ込んでたってわけだ。

いや、育ての親とか言われても、まったく手なんかつけられない。
残念ながら、どうにもできないよ。
若い者に体を貸す仕事からも、すっかり足を洗った。          みんなと同じように、                        ただただ、あいつを近づけないように、  

よくよく手を洗ってるだけさ。

              


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