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『素直さ』のかんちがい

就職活動をしていた頃、採用担当の方が「素直な方がいちばんです」と言っていた。

詳細を聞くと、「アドバイスしたことを素直にやる人」といった補足説明があったように思う。

当時の私はこの「素直さ」について、『言われたことを否定せずにやる人。つまりは従順な人を求めてるんでしょ』と思っていた。

今から思うと、このように相手の本心とは別かもしれないことを勝手に解釈して、否定していた私は、素直じゃなかったように思う。

けれど社会人経験が長くなり、いろんな人を指導したり、見るようになってから、採用担当の人が言う「素直さ」がなにかぼんやり見えてきた。

私が思う素直な人とは、「相手の話を勝手に解釈せずに、正面から受け止め、自分の感情を理解し、伝えられる人」だ。

例えば、「Aさんは、〇〇が上手だよね」と褒められたとき。

「いえいえそんな事は、□くんのほうが・・・」と言うことがある。

たしかに、事実としてはそうなのかもしれない。けれど、褒められたときの感情はどうだろうか。

本当は嬉しいけれど、恥ずかしいからといった理由で上記の発言をしてしまったり、褒められたことでプレッシャーを感じて、ハードルを上げたくないという思いから、発言してしまったり。

自分の本心とは異なる発言をしてしまっていることがあるように思う。このようなケースだと、「自分の心に素直になれていない」のではないだろうか。もしかしたら褒めた側には、「本心がわからない」という印象を与えてしまっているかもしれない。

また「本心から自分はできないと思っているケース」もあると思う。

これについては、別の観点から「素直じゃない」と思われる可能性がある。その理由は、「仮説を仮説として受け止めていないから」だと思う。

「Aさんは、〇〇が上手だよね」という発言は、あくまで発言者Bさんが発言者Bさんのの観察から得られた仮説でしかない。もちろん間違っていることもあれば、Aさん本人が気づいていないだけで正しいときもある。

けれど、「いえいえそんな事は、□くんのほうが・・・」の発言には「発言者Bさんの考えは間違っていますよ」といった意味も含まれてしまっている。

他の事例でも同様である。

行き詰まってるAさんに「これやってみたらどう?こうしてみたら?」といったアドバイスがなされる時、それはあくまで仮説でしかない。過去の経験からBさんは上手く言ったかもしれないが、上手くいかないかも知れない。

そしてそのアイデアがどれだけAさんの状況に当てはまらなかったとしても、アクションを起こすまでは間違っていると確定することもできなくて、いずれにしても「仮説の1つ」でしかない。

逆に言うと、やっていない状態で「間違っている」と断言できてしまうのは、「自分は正しくて、相手は間違っている」という価値観が背景に見え隠れする。

だからこそ、仮説を仮説として受け取り、「あぁ、(その意見も1つのアイデアとして)いいですね(自分はやらないかもしれないけど)」と言える人が素直な人と見られるのだと思う。

ときにはBさんが言っている発言の裏を読めるからこそ、そう言えることもあるかもしれない。けれど読んだ裏は、あくまでAさんの解釈の域をでない。なので、Bさんが言っていることを、そのまま受け取れていない点でも素直じゃないと思われてしまう。

つまり、素直だと言われる人は必ずしも従順なわけではない。(補足だが、従順な人は、主体性がないことも多く、採用担当がイメージしている人材とは違いがあることも多い)

なのでまとめると素直な人材は、次の人にまとめられるのではないだろうか。
・自分の気持ちと言動、行動が一致している人
・仮説を仮説として捉えられる人
・相手の発言を自分の解釈を加えずに受け取れる人

こうやって考えて見ると、かつての自分は素直じゃなかった。

もちろん素直じゃないことで手に入れられたこともあるにはあるが、素直な気持ちになってから手に入ったものに比べると「…」という気持ちになる。

「素直さ」でくくって良いのかわからないけれど、自分はこれができるようになって良かったと思い、書いてみた。

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