ハイキュー最終回直前で影山飛雄にやられた話
2020年7月20日の週刊少年ジャンプ33・34合併号で漫画「ハイキュー!!」の連載終了が発表された。
終わっちゃうかぁ…終わってしまうかぁ…終わるよなぁ…終わらないでくれぇ…
と、日付変更と同時にジャンプ+で最新話を読み、終わりに対する気持ちが沸々と自分の中に湧き上がってきた。
そんなハイキューだが、今週の影山と金田一・国見コンビとのやりとりに強く感情を揺さぶられたのでnoteに書いていく。
本誌最新号の内容に触れているので単行本派の方は注意。
中学時代、その独裁的すぎるプレイスタイルに侮蔑の意味を込めて『コート上の王様』と呼ばれていたのが影山飛雄という少年だった。
確かに実力は抜群だった影山だが、チームメイトとの力量差などは気にかけず、自分の好きにやるまさに「王様」といったプレイを続けてきた。金田一・国見はそんな影山と同じチームであり、直接的に影山に不満を抱いていた2人だ。
そんな独裁的な影山に対しチームメンバーは不満も募っていき、中学最後の試合で影山が上げたセットアップには誰も応えず、上げたボールは虚しくコートの床に叩きつけられた。
個人競技ではないバレーボールでは1人だけで勝つことはできない。確かに選手としての実力はあるがチームメイトからの信頼は無く、誰よりも勝つことに対して貪欲だった故に影山飛雄は試合に負け、中学でのバレーを終えた。
そんな影山が烏野高校に進学し、選手としても人間としても成長していく様子が描かれているのがハイキューという作品だ。
この書き方だとハイキューの主人公は影山のように思えるが、実際ハイキューという作品は間違いなく日向と影山のW主人公だ。
高校に入学してからも影山は部の先輩に負けない実力だが、練習などでは中学最後の試合を精神的に引きずっている様子が見られた
しかし日向を筆頭とした同じチームの仲間との衝突を経て、独裁的だったプレイスタイルは相手を気遣いチームを勝利へと導くためにその姿を変えていった。
ハイキューという作品は、「烏野1年変人コンビ」こと日向・影山の2人が主軸となり物語が進んでいく。
中学時代は他に部員もいなく、バレーについては天性の跳躍力1本で戦ってきた日向については、バレーボールにおける技術面での成長が作中でフォーカスされる。
影山については物語開始時点で既に高い技術を持っているが、中学時代最後の試合での出来事が尾を引いており、それを克服するなど精神面での成長が多く描写されていた。
この主人公2人がそれぞれの弱みを克服していき、強くなっていくその様子こそがハイキューを読んでいて筆者が一番面白いと思った部分だ。
一方、影山の中学時代のチームメイトである金田一・国見とは同じ地元の高校ということで大会や練習試合で何度か戦うことになる。
そして戦う中で自分達の知っている王様ではない成長した影山に驚いている様子も描かれた。
影山を突き放した金田一と国見についても、影山とはまた別の方向で中学最後の試合を引き摺る様子が作中で度々見られた。
そんな影山、金田一、国見の三人については試合を重ねる内になんだかんだ互いを認めているようになっている様子から明確に和解の描写は無いのだろうと筆者は思っていた。
なので今週のこのシーンは驚いた。最終話直前にしてここまでストレートなシーンが来るとは思っていなかった。
既に日本代表選手であり、来年には海外に行くことが決まっている影山に一緒にバレーするのは無理ではと金田一と国見は言う
そんな2人へ影山は言う。おっさんになってからでも、じいさんになってからでも「また」「一緒に」バレーをやろうと。
そんなやり取りをした帰り道、「アイツは70になってもジャンプサーブ打ちそう」と影山のバレー馬鹿っぷりを笑う国見と金田一
いつか2人とまたバレーすることを思い、笑みを浮かべる影山
高校に入学してからも影山を苦しめてきた「コート上の王様」という烙印、そしてそんな影山を見放した金田一と国見。
それぞれが確かに引き摺っていた過去が今ようやく精算されたのだ。チームメイトから見放されていたコート上の王様、影山飛雄はもうここにはいない。
過去の確執など無かったかのようにまた一緒にバレーをやろうと誘うその姿を見て、この台詞がハイキューという作品を通して成長してきた影山の集大成なのだと感じた。
そして作中のスガさんばりに泣いた。最終話前にしてこれはズルすぎるな影山。
ハイキューという作品はスポーツ漫画だが、作中のキャラ一人一人の掘り下げがとても丁寧だ。そんな中やはりメンタル面での成長について印象的なシーンが多かった影山飛雄というキャラクターには思う所が色々あった。
最終話の直前である今回の話でこのエピソードを消化したのは古舘先生が絶対に描いておきたかった部分だからなのだと思いたい。
最後になるが、高校を卒業して海外での特訓を経てついに再び敵となった影山を倒した日向。自分を苦しめていた過去のチームメイトとの確執を解消した影山。
ハイキュー!!という作品のスタート時点で目の前にあった壁を2人はついに打ち壊した。
最終話ではオリンピックという舞台で、日本代表選手となった変人コンビの活躍が描かれるのだろう。
「始まり」にあった壁を打ち壊したその先にある頂の舞台。そこでどんな「終わり」を見せてくれるのか。
最終回を迎える寂しさはあるが、それと同時に2人の活躍がとても楽しみなので最後までしかと見届けよう。