実体験③呼吸数
悪夢のことは思い出したくない。
現実に起きそうな悪い夢9割、見たこともない美しく幻想的な景色1割。
後から聞いた話によると、1週間くらいは、麻薬を強めに眠らせていたそうだ。
痛みと苦しみから解放するため。
悪夢も相当きつかったが、自分の体を見たら、記憶がなくてありがたい。
体には何本もの管が入っていた。
一番苦痛なのは、口から入っている管。
これが人工呼吸器らしい。
口から喉の声帯を通って肺の入口までの管。
モニターで呼吸を管理し、人工的に呼吸をさせるもの。
一般的に、呼吸は1分間に12回〜20回らしい。
ところが、私は普段から呼吸数が少ない。
頭の左斜め上に設置されているモニターを目で追うと、呼吸の波形が見えた。
息を吸って吐くと波形に山ができる。
しかし、私の場合は、吐き切る半分で次の呼吸が自動的にやってくる。
壁時計の秒針を見て、自分の呼吸ペースを測ると、私は1分間に5回が心地良い、、、
看護師さんが来たタイミングで、手のひらにひらがなを書いた。
「わ・た・し・
こ・き・ゅ・う・す・く・な・い」
これが精一杯の表現だった。
医師らしき人と2〜3人でモニターを見て何か話し合っている、、、、。
無呼吸になるから、10で設定しよう、、、
そのようなことを話しているようだった。