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奪われるものか #音楽の薬箱
曲名:人生は夢だらけ
アーティスト名:椎名林檎
効能:自分自身の人生を自由に生きてもいいと、背中を押してくれる
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「私の人生は、誰のもの?」
椎名林檎さんの、「人生は夢だらけ」に出会って、私の中で価値観が変わった。最初の出会いは、テレビのCMだった。高畑充希さんの歌声を聴き、このフレーズが強烈に頭に残った。
それは人生 私の人生
人生は、何のためにあるのか。
会社の利益のため?
人の役に立つため?
社会をより良くするため?
家族を笑顔にするため?
もちろん正解だろう。
しかし私は、密かにずっと思っていた。
「私は、私自身ではない何かの傀儡に過ぎないのではないか」と。
これが人生 わたしの人生 鱈腹味わいたい 誰かを愛したい 私の自由 この人生は夢だらけ
ずっと、私の中には、色々な「べき」が棲んでいた。
「誰かの役に立つべき」
「いつも笑顔でいるべき」
「美しくあるべき」
「人に迷惑をかけるべきではない」
自分を見失っていることに気付かぬ生き方は、さながら糸で吊るされた操り人形のようだった。意識の表層では楽だった。しかし、心の奥では。
好きな人がいた。
しかし、自分自身の感情に気づけなかった。
あの人に愛して貰えない今日を正面切って進もうにも難しいがしかし
椎名林檎さんの声が、閉ざされた扉を叩く。
扉の外で、椎名林檎さんは唄い続ける。
それは人生 私の人生 誰のものでもない
「人生は夢だらけ」は、ついに扉を破壊した。
彼女の歌詞は、クーデターを起こすには十分すぎた。
私の価値観が変わった。
「自分の人生は、誰のもの?」
私の人生は、私のものだ。
奪われるものか 私は自由
好きな人が飲み会で私に言った。
「立夏さんて、真面目な所が素敵だよね」
飲み会がお開きになった後、シャッターが下りた夜の地下街を、椎名林檎さんと一緒にハミングしながら歩いて帰った。
体中に繋がれていた糸は、とうに切れていた。
奪われるものか
奪われるもんか。
人生は夢だらけなのだ。
この曲は、私に自由をくれた、大切な曲だ。
<了>
この記事は、こちらの企画の主催者見本記事となります。
企画名:音楽の薬箱
ここにお示ししたエッセイは一例ですので、基本的な様式を踏まえ、ぜひ自由に音楽を語っていただければと存じます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。