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最悪(その6)
〇白金楼・とつくにの間(夜)
謎の素浪人、世直し天狗を前に思わず後ずさりする修理。
修理「で、出た……」
サト「(ムッとして)か弱き?」
天狗、刀を抜く。
天狗「さあ娘よ! 今助けてやるぞ!」
サト「いいです。別に」
天狗「え?」
サト「私、何もされてないし」
沈黙。ししおどしが鳴る。
サト「(修理に)帰ってもいいんですよね」
修理「え? ああ」
サト「じゃあ。これで」
サト、小窓を潜って外に出てゆく。
残された修理と天狗。
修理「……何者だ?」
天狗「……世直し天狗」
修理「この辺りの者か?」
天狗「言えぬ」
修理「俺を斬りに来たのか」
天狗、少しの間をおいてうなずく。
修理「分かった」
修理、大声を上げる。
修理「出あえ! 狼藉者じゃ! 出あえい!」
駆け込んでくる忠蔵と天尽の手下たち。
忠蔵「何奴!」
天狗、一同を見渡す。
天狗「それでも侍か。卑怯者め」
天狗、懐から煙玉を放つ。
寝所が煙に覆われる。
煙が晴れ、天狗は消えている。
忠蔵「大事ござりませぬか!」
修理「もう疲れた」
修理、へたりこむ。
○同・鳳凰の間(夜)
花魁の肩を抱き、酒を飲んでいる天尽。
花魁「大丈夫でしょうか」
天尽「なあに。鼠が一匹、好き勝手に走り回ってるだけさ」
天尽、顔色ひとつ変えない。
○裏吉原・通り(夜)
喧騒を歩く天狗の後ろ姿。
天狗「奴を倒し村を導くのだ」
懐から天狗の面が覗いている。
天狗「俺こそが最後の……」
(つづく)