場末ノZ(12)
○劇場かてどらる・廊下(夜)
ルナの写真の前でボックスを踏んでいる武藤。
塚越の声「暁ルナ。かつてのナンバーワンだよ。俺が店買い取る前だから、二十年くらい前かな」
煙草を手に、武藤の隣に並ぶ塚越。
塚越「ステージ録画したの残っててさ。それ見せたらマリア、感動しちゃってさ。まあ俺もだけど。なんかこう心も体もむき出しっていうか。今度君も観る? うん?」
武藤「……」
塚越、突然武藤をくすぐる。
武藤、少し驚くも無反応。
塚越「くすぐったいのは平気なんだ」
武藤「はい。それほどでも」
塚越「痛み感じないってどんな感じ?」
武藤「痛みを感じない感じです」
塚越「じゃ熱いのはどうよ」
煙草を武藤の手に押し付けて消す。
武藤、無反応。
塚越「ゾンビって言うよりロボットだね。でも、ロボットならちゃんと仕事しないとさ」
○同・男子トイレ・前(夜)
ドアの前に立っている手下。
武藤の苦しむ声が響いてくる。
シスター達が足早で通り過ぎる。
○同・男子トイレ・中(夜)
塚越、武藤の頭を掴んで洗面台に突っ込み、水をかけている。
塚越「ロボットじゃ駄目なんだよ。人間は、むき出しで生きないと。マリアには才能があるんだからもっと自分を曝け出してほしいんだ。君はマリアの魅力を引き出すために、そのために雇われてるんだよねえ」
倒れる武藤、ぜえぜえと息をつく。
塚越「そうか。苦しいのはアリなんだ」
塚越、ホースを蛇口につなぐと武藤の口に押し込み水を出す。
武藤、大量の水を飲まされ、もがき苦しむ。
塚越「そうそうその感じ。それが人間だよ。よく覚えておいてね」
塚越、武藤に水を飲ませ続ける。
(つづく)