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兎団「CAFE BIANCA」に寄せて~イチ出演者のセルフライナーノーツ~
演劇の舞台に出ました。練馬区・中野区を拠点に活動する劇団「兎団」の「CAFE BIANCA」(カフェ・ビアンカ)という作品です。
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この記事を読んでくださっている方には作品をご観劇・ご視聴いただいた方も多いと思います。改めてありがとうございました。たくさんの声援も頂きまして、嬉しい限りです。
もちろん出演そのものも嬉しかった。さらには、役者として大きく成長できた公演でした。色々思いたっぷりなので、noteでセルフライナーノーツ書きます。
私は本作の立ち位置はイチ客演・イチ出演者なので、自分の演じた「女主人」という役のことを中心に・・・大体こんなことを書いてみようと思います。
私の演じた女主人の演技について
・2022年上演版と2023年上演版の共通部分
・ 〃 の差分
・主な共演者との関わり方について
ちなみにこのnoteは共演者の佐藤天衣さんと吉川種乃さんのnoteを拝読して大変面白かったので「私もマネっこしたい」が原動力です。
おふたりのnoteリンクを載せます。オモシロなので読んでください。
2022年上演版と2023年上演版の比較
2006年に結成し今年18年目を迎える兎団。その長い歴史の中でも「CAFE BIANCA」は団体結成のきっかけにもなった超初期の作品だそうです。そのたびに改稿を重ね、色んなバージョンのビアンカがあります。
ただ2022年11月上演版と2023年5月上演版にはこれまでとは違う、特別なつながりがあります。
流行り病のために有観客公演実施を中止、配信上演のみとなった2022年11月上演版
2022年版が有観客公演中止となったため、リベンジを掲げてほぼ同じ座組で上演。脚本・演出共にバージョンアップした2023年5月上演版
2023年版は2022年版の結果を受けて企画されたリベンジマッチをきっかけとした公演であり、2022年版が有観客で実施されていれば、2023年版は存在しなかったわけで。
ふたつでひとつのような強いつながり。そっくりだけど、リプレイではない。
個人的には「1.5卵性の双子」的な公演だと思っています。
そんな中で、2022年版の類似点と相違点、女主人にフォーカスを当てて書いてみます。
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同じところ
それは、役作りをしなかったこと。
「役作り」にもいろいろありますが、ここでは「役の考え方や内面を掘り下げる作業」「役の性格/内面のパーソナリティーを決める作業」を指します。個人的にはこの手の役作りに、少し懐疑的です。イチ役者としても、演出としても。
役作りと言っても他にも様々なアプローチがあるし、尊敬する役者さんにも役作りを綿密に行う方もたくさんいるのですが、イチ作り手として採用することはまだ当分ないかな。
その代わり、自分は「体癖」「物語における役割」の2点を考え、それが際立つようにします。いわゆる内面的な掘り下げや裏設定的なものはノータッチ。(必要に応じて、稽古場で共演者と検討することはあります)
①体癖:ちょっとルーズにする。理由:他の人と被らなそうだったから。
(本当はもうちょっと深めの理由もあるのですが、長くなるので割愛)
※表象する個性として「台詞の言い方」を検討する方もいると思うのですが、私はこれもしません。自由に表現できる音域が狭いのでシーンによって使い分けられるように制約は外しています。
②物語における役割:
1. 共感される対象であること。モームへの絶対的恋慕を表現すること。
→これはまあ…脚本に書いてあるので、とにかくそれを忠実に演じられれば自動的に達成です。
2. 過去~現在~これから起こる(であろう)ことを通貫で知っていること
→ 特定のモチーフについて詳しく語れる人物や出来事の当事者は他にいますが、浅かろうと傍観者であろうと、「CAFE BIANCA」で描かれていることをすべて知っているのは唯一女主人が持つ特性です。
そのため、物語の状況説明や狂言回しの役割を多く担っていました。そのため情報のウェイトが高い台詞も多かったです。
→ 重要な台詞は役の感情表現よりも、情報を整理してクリアに発話することを心がけました。その発話に違和感がないように、逆にそれ以外のシーンを調整しています。
あともうひとつ大切な共通ポイント。それは
「楽しそうに」すること。
なんでも楽しいんですけど、役じゃなくて、演じている俳優本人、つまり私自身が楽しんでそうだなということを演技に乗せること。
これは、兎団という劇団のおおきな魅力のひとつだなと私が以前から思っていたことなので、イチ客演が思う団体のカラーとして、やっています。
違うところ
過去と現在の振る舞いに差を出したところ。
2022年版では、私の稽古の参加開始が他の方より後発だったことがあります。稽古に来てみたら皆さんそれぞれの演技プランとシーンの原型のようなものは出来上がっていて。
「ここにどうはめようかな」と思ったのが演技プラン作りのスタートです。自分含めて出演者は17名の大所帯。空いている席があるかどうかを探しました。ひと席だけ空いてました。「悪い奴」です。
衣装・ヘアメイク佐藤さんの多大な貢献もありまして、ゴリゴリのヴィランに仕立てました。アンジェリーナジョリー主演の「マレフィセント」が裏モデルになっています。
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2023年版では、「過去回想の女主人と、現在の女主人の衣装を変えてほしい」という衣装さんへのオーダーがありまして。それを演技に反映しました。(ただ、そもそも私の演技が違ったから最終衣装になったという説もあるので、鶏卵です。双方歩み寄りとも言います)
2022年版のゴリゴリヴィランも、相当気に入っていたのでそのままやってもよかったのですが、せっかく同じ作品にここまでの短期間で連続登板するのだからさらに高みを目指したいぞ……ということで、「共感される対象であること。モームへの絶対的恋慕を表現すること」に重点を置くことにしました。
結果2023年版の女主人は
現在:2022年版を踏襲した悪い女仕立て
過去回想:モームに恋する乙女仕立て
~二種類のソースを添えて~ となっております。150年好きな男を待つと人格が歪むんだよ、きっとそうよ。
多面的な矛盾のある演技作りが好きなので、チャレンジできてよかったなと思っています。
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主な共演者との関わり方について
私が役作りをしないことのひとつの要因として「個の性格は他者との間にある」と信じているからです。これに正誤はなくて、私の宗派みたいなもんです。
友達といるときの「わたし」と職場と一緒にいるときの「わたし」。それぞれ喋り方も立ち位置も違うと思いませんか。私は結構グループによって振る舞いが変わるタイプなんですけど、どうでしょうか。
これを難しく言うと「ペルソナ」というらしく、誰それの友達のペルソナ、誰それの子供であるペルソナ、職場で社長をやっているペルソナ、誰もが複数のペルソナを持っていて、それを環境や状況に合わせて使い分けているそうです。人間皆役者ヨーッ。
だそうなので、私は演技を考えるときに「私の役は共通してこう」という振る舞いは決めないです。共演する相手と、相手といる状況に応じて演技を使い分けています。
なんかそのほうがリアリティがある気がするから。
ということで、女主人と関係があった、絡みのあった共演者をピックアップして書いていきます。
①モーム:
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「好き!」の1点さえ揺るがなければええやろと思って、ほぼノープランで心のままにやっています。相手はレジェンド斉藤さんですし、私が何をやっても受け止めてもらえるだろうと。胸を存分にお借りしました。
感受性の扉ガバガバにして稽古して、そのとき出たものの中で特によかった※ものを本番に残しています。具体的な一例としては、モームを椅子で殴りかけて辞めるところです。
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中盤の稽古で出たのですが、その瞬間のことはあまり記憶にありません。多分無性に腹が立ったのだと思います。
※よかったの基準:自分が気に入ったかどうか+共演者のリアクションによい変化が出たものなど。
②メイ:
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2023年版では明確に「メイという名前へのネガティブな反応」を追加しました。物語の核になるメイですが、序盤では名前しか出てきません。その時点でメイという人物が重要なんだよ~というフックを掛けたかったからというのが理由です。
メイという言葉を投げかけられたときのリアクションを粒だてられれば結果的にメイの重要さを観客に引っ掛けられると。そんなわけで「メイ」は女主人の地雷ワードです。
結果、あまりに邪険に扱いすぎていたので、稽古中メイ役の琴音さんに「メイが嫌いなわけじゃないです。嫌いなのはメイと言う事象です」と謎のLINEをしました。
③イム:
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色んなシーンで振り回され、自分の失恋に向き合うことを強いられ、とにかく精いっぱいヘトヘトになる登場人物なので、ベース優しく接しています。最終的には強制ではなくて、自分で決断できるように。
表象で大事にしたのは、なるべく同じ目線で接すること、回答をコントロールしないで待つこと、丁寧さを残すこと。
イム役の古川さんは感受性豊かで出力も全身全霊、リアクションさえ取れれば成立してしまう。そこにどんなプラスワンの働きかけができるか、が個人的には一番考えたことでした。
④黒猫:
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女主人はモームともペアですが、正パートナーはモーム/メイなんで。となると女主人のパートナーは、黒猫ちゃんでしょう。
稽古中のある時から「パートナーの吉川種乃を輝かせる」をテーマに据えて、女主人の演技プランにも適用しています。
細かく書くと長くなるのですが吉川種乃はとにかく人に波長を合わせる天性の才能があることに気が付いたのがデカかったです。
なので「黒猫がさらに元気になるように女主人も時々元気よくやる」「絶対合わせてくれるので手加減なしで全力投球する」「テンポのコントロールはこっちで持つ」を心がけました。
若い方なのに才能に溢れていて、すばらしい役者さんだと思います。これからも吉川種乃をよろしくお願いします(宣伝)。
最後に
これから先、役者として大きく技術が成長することはないかなと実は思っていました。年齢も年齢だし、演出と脚本がメインなので舞台に立つ場数も少ないし。
けど、今回「CAFE BIANCA」稽古中にはっきりと「今自分芝居上手くなったな!」と実感する瞬間があって。感激しました。稽古開始前にはできなかったことができるようになっているって嬉しいものです。
専業俳優の人よりのんびりペースにはなりますが、これからもひとつひとつの舞台でベストアクトを叩きだせるように精進していきます。
演劇は楽しい! とても!
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配信アーカイブ販売中です。
というわけで、現在のベストアクト「CAFE BIANCA」2023年上演版
配信アーカイブが絶賛販売中です。購入期限と視聴期限、いずれもまもなくなので、気になっているけどまだ買ってないよ・買ったけど見てないよ、という方お早めに!
購入期限:~2023年6月9日 23:59
視聴期限:~2023年6月11日 23:59
期間中は何度でもご視聴いただけます。
配信購入者特典:出演者によるビアンカ即興映像(台本芝居が主戦場の俳優たちが力技で即興しております。お楽しみ映像です)
2022年上演版はDVDでご購入できます。
兎団、またはビアンカ、あるいは立夏、いずれかのガチ勢の方はDVDもゲットしていただいて、比較鑑賞ぜひお願いし〼!