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【鹿児島】奄美大島 産婦人科医・小徳羅漢先生が語る離島医療の魅力~島に愛を注げば注ぐほど自分にその愛が返ってくる~◆Vol.2 #file2

こちらの記事は
【鹿児島】奄美大島 産婦人科医・小徳羅漢先生が語る離島医療の魅力~島に愛を注げば注ぐほど自分にその愛が返ってくる~◆Vol.1 #file2
の続きとなります。ぜひVol.1をご覧になってからこちらの記事をお読みください。Vol.1は下記リンクからご覧になれます。

離島医療は患者さんとの距離が近い分、責任感がある

----実際に離島で働いてみて、離島ならではの出来事だと思ったことはありますか?
「島では患者さんとの距離が近いのですが、不安の中で診療することって結構多いです。

これってただの風邪なのかな、もしくは肺炎なのかな、といったように悩むことがあります。小学生の元気な子が風邪症状できて、診察して、胸の音は綺麗だし風邪だろうと診断してお薬を出して帰します。患者さんが帰った後、自分の中では『あの子大丈夫だったかな、不安だな』と思うんです。

でもその子が実は近くのスーパーの店員さんのお子さんで『ああ、先生この前はどうも、元気になりましたよ』と言われたとき、『ああよかった』と思うのです。このように自分が治療した結果が返ってくるというのを実感できるのが離島医療の特徴かなと思います。」

----やりがいにも繋がっているのですね

「そうですね。ある意味それで責任感も持てますし、自分がミスすると今度は逆に『先生治らんかったよ』ってフィードバックももらえる半面、それで悪い噂になってしまうとちょっと悔しい思いをすることもあります。」

----そうなるとどの診療も緊張しそうですね…

「そうですね、やはり責任感を持って診療することになりますね。」

----小徳先生が普段の診療で意識していることはどのようなことでしょうか。
「すぐ近くで専門医に相談できるという状況ではないことが多いので、なるべく自分でできる範囲内のことはやるように広い領域で診療しつつ、ここは専門医に相談しないといけないな、とか、ここはもうすぐ本土に搬送しないといけないなという判断を常に頭の片隅に置きながら診療しています。」


----普段診療していて、不便に感じたり不満に思ったりすることはありますか?

「やっぱりさっきの専門医に相談というところでは、電話で相談したり、あとはその医師に手紙を書いて患者さんに船乗って遠く離れた本土の病院まで行ってもらうことがほとんどなのですが、それが遠隔医療で繋がって、テレビ電話などで専門医の先生がさっと診てくれたらいいのになと思うことはよくあります。」

----専門医の紹介というところを掘り下げたいのですが、やはり顔が見えない関係なんですか?手紙とか…

「はい。基本は知らない先生にお手紙とか電話で対応してもらっています。

----どういった疾患が多いのでしょうか?

「産婦人科の場合は、明らかにこれは手術時間が長くなり、出血時間が長くなって島内では輸血量が足りなかったりとか、帝王切開中に子宮を取り出す手術が必要かもしれないとか、そういったときは大きな病院でやってもらったりします。他だと脳梗塞、心筋梗塞とか…。大島は基本、脳梗塞や心筋梗塞の治療もある程度島内で完結できます。それ以外の管理や血管の手術とかは本土でお願いしたりすることは多いと思います。」

小徳先生が思う離島医療のやりがいとは

----改めてお聞きしますが、離島医療のやりがいはなんですか?

「島に愛を注げば注ぐほど自分にその愛が返ってくるというのが離島医療の最大の魅力だと思います。」

----愛した分だけ愛が返ってくる、それはどんなときに感じますか?

「患者さんのご家族がまた患者さんとして来たり、病院の職員の方のご家族が患者さんとして来たりすることが結構よくあるんです。

それを知らずに患者さんに対して丁寧に、真摯に診察して、治療して患者さんが良くなって、それで自分としては満足なのですが、そのあとにプラスで職場の家族から『先生この前ありがとうございました』と感謝されたり、街で歩いていて『ありがとうございました』と知らない人とかにも声をかけていただいたりすることがあります。

しっかり診療してよかったなと毎回思えます。自分が本気で接した分、返ってきたなと思えます。」

医師が島全体の雰囲気をつくる

「色々な離島医療を頑張っている先生がいるんですが有名な先生って結構いるんです。

良い先生がいる島に行くとそのコミュニティ全体がなんとなくふわっとやわらかい雰囲気で、『いい人が多いな、良いコミュニティになっているな』と思うんです。いい医療をしている島は、全体として良い人が増えていくんじゃないかなってなんとなく思います。」


----すごく良いことが聞けました。先生が今の島で勤務されていて一番印象的だったエピソードをお伺いしたいです。

「総合診療医として働いていたときなんですけど。癌患者さんがいて、患者さんの家族と話して、お家に帰るのはもう無理なんじゃないかという話し合いになっていました。

ご家族が心配・不安に思っているところを何とか訪問看護師さんや訪問介護士さんなど他職種で協力して、その患者さんのお家に帰りたいという気持ちを叶えました。

その後、たまたま僕が外で散歩していたらその患者さんが車椅子でお庭で日向ぼっこをしてるのを見かけました。すごい幸せそうで、お家に帰せてよかったな、家族のもとに返せて良かったなと思いました。」

遠隔医療の実践を模索中

----先生が今後取り組みたいと思っていることは何ですか?
「そうですね…。先ほど言った遠隔医療を離島でどうにか実践できないか今模索しています。大学病院の先生たちと色々できないかとは言ってみているんですけど、今はなかなか制度的な問題でうまくいっていないんです。

ただ、自分みたいな若い医師が発言力を持てるように、離島医療に関する論文を書いたり、研究したりして発言力を増やして、遠隔医療の実施に繋げられたらと思っています。」

----未来の離島医療はどうなっていてほしいですか?

「そうですね、一番はどの島に住んでいても平等に良い医療を受けられることを望んでいます。それも専門医を設置するのではなく、良い総合診療医だったり、良い看護師さんがいて、さっき言った遠隔医療の実践だったり、電子カルテの統一をする。そうすることによって、どの島にいてもいい医療を受けれるようなシステムを作れたらなと思っています。」

離島・僻地医療を志す人へ

----先ほど、学生時代に夢を諦めそうになったというお話をされていましたが、僻地医療や離島医療を志している学生に対してモチベーションの保ち方などアドバイスがあれば教えてください。

大学病院に1年居たときも何度も心が折れそうになったんです。離島・僻地に行こうと思っても専門医が大事だとか、離島でなにができるんだ、とか。応援してくださる先生もいるんですが、大学病院では色んな先生に言われ続けたりするので、心が折れそうになりました。

そのときに助けになるのは、コミュニティです。2年前のゲネプロ※の人たちとも今でもやりとりはしていて、仲間たちと話したりすると、やっぱり離島医療は大事だよなと思い出せたりします。

離島・僻地医療を頑張る仲間を学生のときから持っていたり、あとは病院見学に行ったり、離島にいる先輩や先生と仲間になっておくとモチベーションを持ち続けられるのかなと思います。」


※ゲネプロとは・・・離島・へき地医療を志す医師のための研修プログラム

----実際に離島で働くにあたって、ある程度経験を積んでから離島に行くほうがいいとか、そういったことは関係ありますか?
「うん…むずかしいですね。たしかに本当の基礎は大事なんですよ。患者さんの命を救うという意味では。

危険かどうかを判断する力さえ付けたら早い段階で見学に行って、実際に離島医療の現場でどういうふうに医療者が動いているのかを見ておくと、大きな大学病院などで研修した時も離島医療の目線で学ぶことが出来ます。

どこで働いたとしても、『もし離島だったらどこで搬送なのかな』、『どのタイミングで患者さんが急変していくかな』という目で患者さんを診るのはすごく大事です。そういった力は離島でもどこでも身に着けられると思います。どこにいてもね。逆に、離島でもそういった意識が無く働いていたら力は付きません。」

----では最後に、離島医療に興味を持っている人たちに向けてメッセージをお願いします。

「離島医療は自分が一番成長できる場です。臨床医としても、人としても成長できる素晴らしいフィールドだと思うので、人生の中でいつでもいいのでぜひ一度足を踏み入れてみてはいかがでしょうか。

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インタビュアーよりコメント

小徳先生の離島医療に対する情熱が感じられるインタビューでした。診療した後の生活まで見えるということが離島医療の魅力だと非常に伝わってきました。「島に愛を注げば注ぐほど自分にその愛が返ってくる」という言葉、とても素敵です。私も離島医療を志す学生ですが、先生の言葉が非常に励みになりました。

この記事を書いた人

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古都遥 聖路加国際大学看護学部看護学科3年
大学1年の夏休みに小笠原諸島を訪れた際、自然の豊かさや島民の温かさに感銘を受け、離島での生活や医療に興味を持つ。離島医療振興に貢献したいという思いを抱きながら、日々勉強に取り組む。
【奄美大島について】
鹿児島市から南へおよそ380キロメートルに位置し、全国の離島の中でも沖縄本島、佐渡島に次ぎ3番目に大きな島。
奄美市は、島全体の約4割を占め、中核都市としての機能を持つ名瀬地区(旧名瀬市)、緑豊かな森林と清流を持つ住用地区(旧住用村)、広い農地と美しい海岸線を持つ笠利地区(旧笠利町)で構成されている。
日本で2番目に大きいマングローブの原生林、国の特別天然記念物アマミノクロウサギなど太古の生命が息づく金作原原生林、奄美十景として知られる夕陽の美しい大浜海浜公園、美しい水平線と亜熱帯の風景を思い起こさせるあやまる岬など多くの自然と景勝地を有している。
また、古くから伝承された五穀豊穣を祈り、祝う島唄や八月踊りなどの伝統文化も随所に見られる。

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