ショートショート 残り物には懺悔がある


お墓の前で目を瞑り手を合わせる。


なんで死んだのは私じゃなくて舞だったのだろう。


双子の姉妹の私達はいつも比べられていた。


容姿端麗。文武両道。生徒会長だった舞


今はお墓の中で安らかに眠っている。



地味。読書。いつも一人の私。


舞だけがそんな私にも優しくしてくれた。


ここ最近、考えちゃいけないことが頭をよぎる。


なんで舞が死んだの。愛が死ねばよかったのに。


みんなも思ってる気がするし、私自身が一番思っている。


「じゃあ…変わろうよ」


私は驚いて顔を上げる。


目の前には顔がぐちゃぐちゃになって血だらけの舞がいた。


「愛ちゃん…死にたいんでしょ。じゃあ…変わろうよ」


恨めしそうにな表情は私が初めて見る舞の表情だった。


「愛にはなに一つ負けたことなかったのに…みんなを幸せにしてるのは私なのに…」


私は足が震えていた。


けど…一つだけわかったことがある。


美しく死ぬよりも無様に生きるほうが勝ちだ。


これからどんな惨めな人生を歩むことになっても…生きていこう。


「うるさい…亡霊は黙って」


近くにあった水桶を持って思いっきり舞のお墓にかけた。


血だらけだった亡霊の顔は、清らかないつもの舞の顔だった。


舞はニッコリと笑い、少しずつ薄れて消えていく。


「ごめんなさい。もう二度と死にたいなんて言わない」


「わかればいいの」


私はボロボロに泣きながら家に帰った。


残り物には懺悔があった。


(566文字)

たらはかにさんの毎週ショートショートの参加しております。
お題 残り物には懺悔がある


読んで頂きありがとうございます。

いいなと思ったら応援しよう!