ショートショート 忘年怪異


「お〜い、こっちこっち。空き地で絵巻爺さん来るって〜」


30人程の小学生がシートの上で体育座りをしている。



「忘年怪異、始まり、始まり」



「知らない絵巻だね」



「昔々、ある所に有名な絵巻を持った商人がいました。商人はその絵巻を手作りで作ったそうです。絵巻を使って子供達を集めた商人はお菓子を売って生活してました。絵巻の評判を聞きつけたお殿様はその商人を連れて来いと家来に命令します。仕方なく家来が絵巻を持った商人を探しますが一向に見当たりません。家来は町人に特徴を尋ねるのですが誰も覚えていません。ではどんな物語だったかと尋ねますがそれも答えられません。なぜならその商人の正体は、怪異だったのです。当時は自然が豊かで、たくさんの怪異と人は互いに共存して生きていました。しかし明治維新以降は、人が怪異を認めなくなりました。怪異とは怪異を認める人にしか見えないのです」



「なんで俺達ここに座ってるだっけ」



商人は絵巻を持って旅を続けた。


(410文字)

たらはかにさんの毎週ショートショートの参加しております。
お題 忘年怪異


今回も楽しく書けました。
普段とは少し違った内容になってよかったです。
最後まで読んで頂きありがとうございます。


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