ショートショート タンバリン湿原
路上にタンバリンが落ちている。
家出をした僕はそのタンバリンで遊んでいた。
パッパラパンパンパッパラパンパンパッパラパンパンパッパラパンパン
パン
パンパン
パッパラパン
手だけじゃない。
肘、膝、なども巧みに使い細かい手先でタンバリンを演奏する。
タンバリンはずっと待っていたかのように綺麗な音を奏でてくれる。
目を瞑り演奏に集中すると、僕は湿原で演奏している気分になった。
グ
グ
パ
グ
グ
パ
湿原には僕しかいない。
ダラダラダラダラダラダラダラダラダラダラダラダラダラダラダラダラダラ
タンバリンなんて演奏したことないのに自然と体が反応して動く。
タッタラッタッタラッタタッタラッタッタラッタタッタラッタッタラッタ
パン
パン
パンパン
僕は演奏を終えた。
目を開けたのにそこは妄想に耽っていた湿原だった。
「僕は君の行きたい場所に連れっていける」
タンバリンの声が聞こえる。
僕はお母さんに演奏を聞いてほしくなってしまった。
「ごめんなさい」
僕はタンバリンを持ってお母さんに謝った。
「わかればいいのよ。ほら演奏してごらんなさい」
僕達はタンバリンの皮のようにピンと張り切り、一生懸命演奏した。
お母さんは笑っている。
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お題 タンバリン湿原
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