【ショートショート】深煎り入学式(412文字)
47年前
大学受験から逃げた私は、地元の工場に就職した
大学に行かない理由を、家が貧乏だと言い訳した
本当は落ちたときに周りからバカにされるのが怖かっただけだ
背負った学歴コンプレックスは凄まじかった
苦い人生を歩んだ
シワの増えた顔を鏡で見るたびに苦労したと思う
あのときに受験したらどんな人生だったのだろうか
今の私には恥を晒せる友達すら周りにはいない
先日、息子が私にMacBook airを定年祝いで買ってくれた
パソコンは操作できるが理由がわからなかった
すると息子は言った
「定年したら暇だろ。通信制の大学いけよ。もう手続き済ませたからさ」
なんとも自分勝手な息子である
ただ私は47年前の後悔を残したまま人生の幕を下ろすのも腑が落ちなかった
何か汲み取ってくれたのかも知れない
オンラインで行われた入学式
パソコンの画面に映るのは同じ年くらいの校長の姿
感動するな
人生捨てたもんじゃない
深煎りのコーヒーを一気に飲み干した
全然苦味が足らないな(笑)
(412文字)
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お題 【深煎り入学式】
最後まで読んで頂きありがとうございました。