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ショートショート 祈願上手
「神様なんかいるもんか」
祈願上手と言われている和也に強がりを言った。
同じ高校の親友の和也は友達が多く、先生の評価も高く、文武両道だった。
大学も推薦で名門私立大学に合格した。
それに比べて俺は友達もいないから、一人で本を読み、家では勉強を必死でやるが、成績は伸び悩んでいた。
「雄太は自己流でやりすぎ。ちょっとは周りも頼れよ(笑)。時に神様に祈願するのも大切だぜ」
「黙れ。神様なんているもんか」
「和也がビルから飛び降りた。上司のパワハラに耐えられなかったみたい。それで誰にも相談できなくて…」
和也の彼女の凛から電話をもらったのは、会社から帰る途中だった。
俺は凛の話を理解できなかった。
いや、理解したくなかった。
本音を言えないのが和也なのだ。
「あいつ、俺にすら相談しなかったのかよ…」
夜、俺は和也が大学受験のときに祈願してくれた神社に行った。
「雄太が〇〇大学に合格しますように」
綺麗な字で書かれた絵馬を見つけた。
祈願上手な和也のお陰か、俺は希望の大学に行くことができた。
別々の大学になった俺達は少しだけ疎遠なり、互いに別の地域で就職した。
「神様なんているもんか。もしいるなら…和也を返してください」
神社で泣き崩れ雄太の祈願は届かなかった。
(515文字)
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お題 祈願上手