ショートショート 2cmアパートメント


顕微鏡をこっそりと覗く。
2cm程の正方形の家には男女が愛を育んでいた。
これから成長してく二人を見ていると私はつい頬が緩んでしまう。

日本人の9割が花粉症になってしまった現代。
社会は花粉症の研究に熱心になっていた。
私は花粉の研究を続けていたが、この医薬品の開発に成功すれば、ほとんどの花粉症患者は救われる。

ただ私はなんとなく思った。

この花達はただただ人間のエゴにより絶滅される品種になることを。
実際、この花は社会から嫌われている。
この花を燃やして騒ぐ若者も増え始めた。

私はこの花が好きだった。
死んだ家内は数少ない花粉症に悩まない体質の持ち主だった。
いつもこの花を飾り家を明るく保つことに努めていた。

私はやってはいけないことをした。
薬に不必要な副作用を加えてしまった。
この薬を飲み続ける場合は、この花を摂取しなくてはいけない。
そうすれば、この花は絶滅しなくてすむ。

私は人間じゃないな。
まぁいい。
生まれ変わったら家内と花粉になろう。

2cmのアパートには小さな花が咲いていた。

(433文字)

裏お題  2cmアパートメント


最後まで読んでいただきありがとうございます。

いいなと思ったら応援しよう!