【毎週ショートショートnote】 友情の総重量
「俺たちの絆は地球よりも重い」
中学生。
いじめられていた俺に海老沢が言ってくれたセリフは、今でも忘れられない。
鼻と口の周りにホクロがあった俺は周囲の人間からハナクソ野郎とイジメられていた。
そんな俺と海老沢はいつも一緒に帰ってくれた。
社会人になった俺達は久々にご飯に行くことにした。
「なぁ…八重樫、お前ちょっとお金貸してくれない??」
「か…ね…??」
「実は暗号資産投資にお金が必要でさ、この仕組みでお金を預ければ必ず儲かるんだよ。100万円貸してくれたら、1年後に200万返すよ」
「ごめん…投資とかは俺には難しくてさ…」
「俺達、親友じゃないか。絶対返すから。頼むよ」
「ごめん…親友だから…それにそんな大金ないし…」
「チッ…使えねぇ鼻くそ。お前とは二度と連絡しねぇーよ」
48歳。
海老沢が逮捕された。
俺は海老沢に面会にしに行く。
「海老沢…」
「八重樫…俺の現状を見て笑ってるのか…」
「…」
「中学の頃は俺がお前を守ってたのにな…無様だよな」
「…」
「実は陰でお前の悪口言ってたの俺なんだよ」
「…」
「鼻くそだのボロクソ悪口言ってたのにな。お前だけ幸せになって羨ましいよ」
「…」
「なんだよ…なんか言えよ」
「お前が俺のこと陰でいじめてたのずっと知ってたよ」
「…じゃ…俺が逮捕されて嬉しいかのか??」
「いや…それでも俺は、勝手に親友だと思ってたから…」
「…」
「絆…0キロだし…0円だよ。尚更…親友なら…だから価値があるんだと思う」
八重樫は帯のついた札束を海老沢に渡す。
「お前が出所したときのために、何かと必要だと思うから。けど、俺達はこれから他人だし、二度と俺の前に現れないでくれ…」
「…」
「さようなら…今まで…ありがとう」
57歳。
フラフラのみすぼらしい格好の初老の男性がこちらに近づいてくる。
「お…れ…」
「すみません…どちら様ですか」
「…俺達の絆は地球より重い….」
俺はゾッとして背筋に大量の冷や汗が湧き出るのがわかった。
「…これ…」
初老の男性はジャケットのポケットから100万円を私に渡してくる。
「今までありがとう…許してくれ…」
俺は涙を堪えながら手を握る。
「おかえり…」
(876文字)
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お題 友情の総重量
読んで頂きましてありがとうございます。
どんどん長くなってしまい申し訳ないです。