ショートショート 節分胎教

「鬼は…外…この子はずっと…私の…物」

気づいた時は乳児園だった。

母は父のこと包丁で刺した。

父は他も家庭を持ち、複数の女性に宿った命をお金の力で堕ろさせていたらしい。

母にも同様のことを強要したが、それを拒否した母が暴行を加えられそうになり近くにあった包丁で腑を抉ったらしい。

先生は社会に愛に溢れていて、国は生きる権利を守ってくれるって言ってくれるけど…他の大人や周りの友達の目を見れば、この世界の理不尽が嫌でも胸に突き刺さる。

母が私を世界に産まなけば、母は刑務所に行く必要もなく、父は死ぬこともなく、俺もここまで苦しまなくて良かったって…思ってしまった時点で俺は地獄に落ちるのだろうか。

「ここは地獄…一緒に天国に行きましょうね…」

目の焦点のあっていない母の顔はもう普通の精神じゃないんだと悟った。

地獄…か。

ここから飛び降りたら楽になれるのか…
















当時の日記にはそう綴れれている。

俺はこの状況を一冊の本に救われた。

恩返ししよう。

(410文字)





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お題 節分胎教






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