ショートショート もじもじ社
出版社のもじもじ社は有名な作家を輩出していた。
やはり本という文字を扱うビジネスなのでユニークな社名にしたのだろう。
大手製薬会社で営業をしていた私は容易に転職できた。
私も本の良さを多くの人に知ってほしくて転職した。
が、もじもじ社の職場の雰囲気はジメジメしてた。
大きな声で挨拶をしても、小さな声でしか挨拶してくれない。
先輩達はダンゴムシの姿勢でパソコンに向き合っている。
本当にここであの有名な本が出版されたのか。
作家の先生達に挨拶しに行くと、驚くことに作家の先生もダンゴムシのようだった。
「あぁ…うん…よろしく…」
私は心配になった。
しかし、帰社後に先生から貰ったデータを確認すると、素晴らしい文章で書かれた作品があった。
「先輩、素晴らしい作品です。この作品、絶対売れますよ」
「出版業界は甘くない…もっと良い作品に…」
このダンゴムシ集団は本を愛しすぎたが故に喋る能力が衰えたんだ。
私がダンゴムシになれたのは三年後のことである。
(410文字)
もじもじの人達って自分の世界がちゃんとあって話してみるとユニークな人って結構多いですよね。
少し生きづらいかもしれないけど、自分の好きな世界があるのは素敵なことだと僕は思います。
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裏お題 もじもじ社