愛されたかったよ。
耳が聴こえない子に僕の聴覚をあげたい。
きっと僕より上手く使ってくれるだろう。
山奥の長閑(のどか)な音も
誰もが嫌がるような街の騒音さえも
どんな音であっても、”聴こえる”という当たり前に誰よりも感謝するだろう。
そして願わくば、”聴こえる”事で色んな幸せを感じて欲しい。
貴方を大切に思っていつも支えてくれる人の声を沢山聴いて欲しい。
僕のような思いをしないで欲しい。
耳に入ってくるものが罵声ではないように。怒声ではないように。
貴方を大切に思う人の優しい声でありますように。
怒りを隠しきれないような荒々しい足音が耳に残りませんように。
貴方の元へ駆け寄る幸せに溢れた音でありますように。
貴方が”聴こえて良かった。”と思える世界が広がっていますように。
そんな幸せな未来があれば良いのになって最近よく考える。
愛されたかったよ。
親に愛されたかったんだよ。
ほんの少しのことでも褒められて、頭撫でて欲しかった。
親が手を挙げたのを見ると肩をすくめるんじゃなくて、よしよししてもらえるってワクワクしていたかった。
沢山抱きしめて欲しかった。
愛して欲しかった。
殴らないで、叩かないで。
愛されたかったよ。