人間の絆を強める要素
私たちは、不安なことがあると誰かと一緒にいたいと思います。誰かがそばにいてくれるだけで、それだけで不安が軽減されるためです。逆に心配もなく、不安のない生活を送ると、特に誰かと一緒にいたいとも思いませんし、一人のほうが気楽だ、という気持ちになります。地震や火災、戦時中など、社会に不安が高まっているときは、人は誰かと一緒にいたいと思うようになり、人間同士の絆が強くなる傾向があります。米国ルイジアナ州立大学のトーニャ・ハンセルは、2001年9月11日に発生したテロ事件の後で、ニューヨークにある62郡全ての離婚する総計を調べました。1991年から2005年までの総計です。結果は、テロが発生した翌年の2002年は、テロが起きる前に比べて25%も離婚が減っていました。さらに2003年から2005年までの3年間では、なんと37.5%も離婚が減っているのです。社会が豊かになって、平和になればなるほど、人は他人の助けを必要としなくなるというわけです。そのため、「結婚なんてしなくていいや」という人も増えますし、結婚しても、嫌なことがあればすぐに離婚してしまったりするのです。こう考えると平和すぎるのも、人間にとっていいのか悪いのか、よくわからなくなってきます。少しくらい緊張して、心配や不安を抱えているくらいの方が、人は他人のありがたさを、身をもって感じることができるのかもしれませんね。