【短歌】ねむる
きんいろの溶けたバターのひだまりに老いたる犬のはるかな眠り
人とは違ふ時間を生きてゐることを伝はる鼓動のはやさに知りぬ
おとろへた耳管の奥に降る音がやさしい雨であつたらよいが
しまらくを鳴いてゐたるを大き伸びひとつせしあとしづかになりぬ
まるき頭蓋なでたるのちにまだうすくひらきしままのまぶた閉ざせり
台の上にねむるかたちにうづくまるちひさき骨の朽ち葉のかるさ
さゐさゐと雲は夕日を運びつつやがて来るべき浄火をおもふ
春の川みなもが先に暮れてゆきなのはななのはな眠るたまゆら
初出『あみもの』第四十号
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