【短歌】海と琥珀
八月のひかり重たしあへぎゐる夏草の上、ひとつの諫死
こなごなの光を踏んで立つてゐた 背に鋭きうろこを隠し
流氷の海を見てゐるまなざしにきみは云ひたりダリアの赤を
吐水口しんと冷えたりまひるまのタイルにふれるみづのさみしさ
夏菊のにほひをさせてきみがつく嘘 きららかな雨を思はす
とけあつてひとつの水にかへつてもなほあふれくるかなしみはあり
風しづかにうごきゐる午後ひぐらしのこゑが時間を刻んでゆくよ
まだ夢を生きてゐるやうな横顔にきざす足音しづかに待てり
ぼくたちの羽うちかはす音こめて琥珀は閉ぢる夏の終りに
花蜜をふふみてかへる家なみの上にはすずしき月もかからむ
以前に別名義で書いてpixivで公開していた二次創作小説を、連作短歌として再構成したものです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?