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『フランチャイズに加盟する前に読もう』3.FC本部が公表している売上・収益について
今回はFC本部から提示される売上等の平均値について考えてみたいと思います。
結論としては、FC本部が示す平均値を鵜呑みにするのではなく、加盟を希望する個人や企業の経営力と物件特性や競合の状況を勘案して、単体の事業として絶対値で判断することをお勧めしたい。
それでは、よくあるFC加盟希望者とのやりとりから、その理由を検討していきましょう。
私:
あなたはFC本部が示す売上「平均値」をもとにFC加盟を判断しようとしていませんか?
相談者:
売上の平均値って普通にお店を運営すれば実現するイメージなんですけど、違うんですか?
私:
チェーン全体としては平均値に収まるのですが、個々の加盟店の売上・利益はピンキリです。殆どの店が黒字でもあなたの店だけが赤字ということも起り得ます・・・
社団法人日本フランチャイズチェーン協会(以下JFAという)のホームページをみると会員FC本部の情報開示書面が公開されています。
これは国が法律で定めた法定開示書面に加えて独自の開示自主基準を定めてたもので中身はFC本部により異なるものの概ね協会の開示自主基準に沿って構成されている。
開示自主基準作成ガイドライン(抜粋)
ー 売上収益予測についての説明 ー
「フランチャイジーに対して売上予測または収益予測を提示する法的義務はありません」「予想売上または予想収益を提示する場合、類似した環境にある既存店舗の実績等根拠ある事実、合理的な算定方法に基づくことが必要」「既存店舗の収益の平均値等から作成したモデル収益や収益シミュレーション等を提示する場合 は、こうしたモデル収益等であることが分かるように明示する」と示されている。
JFAに加入して情報開示に積極的に取り組んでいるFC本部はそれなりの事業規模で社会的責任も背負っています。
そのため、架空の数字をでっち上げて開示書を公開するようなところは殆どない。なので開示資料を確認することも、FC本部を選択する重要な情報になる。
気を付けたいのは、JFAのガイドラインにもある通り、多くのFC本部が売上や収益を平均値や類似した環境にある店舗の実績数値をもとに説明していることです。
この数値を見て注意したいのは、読み手側の意識だ。読んでいるうちにあたかも自分が出店する店舗もそういった売上・収益になるのだろうと漠然としたイメージが焼き付いてしまうこと。
実際の店舗の売上は以前に書いた通り、店長の力量で上下20%の差が出ると言われる。平均値というのはこの上下差を足し合わせて割ったものなので実態とは異なります。
同じFC店でも、優れた店長のA店の売上は1,200万円、未熟な店長のB店の売上は800万円、この2店舗だけだと仮定すると平均売上は1,000万円。しかし1,000万円の売上の店舗は存在しません。
つまり、開示されている平均売上1,000万円をもとにした収益シミュレーションを見ると、加盟すれば月に1,000万円の売上があって、それに応じた利益が出るんだな、と分かったような気持ちになる。
しかし実際は1,000万円の売上の店舗は存在しません。本来考えるべきことは、あなたなら実際に店舗を運営した時に、どれだけの売上を上げることができるのかということ。
あなたの力量はB店の未熟な店長を上回れるのか、A店の店長には及ばないまでも、それに近いところまでオープン日までの研修でなれるのか、あなたの力量を勘案して判断すべきでしょう。
さらに問題なのは類似した環境にある店舗の実績数値。あなたの出店予定店舗が上記A店とB店と同一道路上で商圏人口も似たようなもで、周辺の競合店舗数等も似通っていたとしましょう。
そして、たまたまA店がFC本部の直営店で、B店が加盟店だった場合、本部は数値を正確に把握しているA店の実績をもとに説明するかも知れない。
本部の関与度にもよりますが、加盟店の収益については、家族が入店している人件費が把握できなかったり、未熟な店長の管理が杜撰で原価や水道光熱費が異常値を示していたりして参考にならないケースも散見されます。
そのため、B店の数値は開示しないといったことが悪気なく起こる。この場合、あなたにはA店の情報だけが開示されるので売上1,200万円とその収支が現実のものとして提示されます。
こういった事例を念頭に飲食FC比較サイトや飲食FC本部が公表している数値を確認する必要があります。単なる平均値の比較で甲乙つけるのではなく、あなたが運営するとどうなるか、検討しましょう。
今回は平均値や類似した環境にある店舗数値の落とし穴について共有させて頂きました。FC本部はフランチャイズビジネスのプロです。
FC本部は法律を遵守し、自主規制やガイドラインの枠組みの中で、FC本部にとって都合の良い情報を選択して勧誘してくる可能性があります。加盟希望者はそのことを自覚して、加盟の可否をご判断下さい。
『フランチャイズに加盟する前に読もう』1
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