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『脱企業経営者もやもや日記』10.2度目の手術延期騒動
2度目の手術延期騒動
2月8日(火)2回目の手術延期の知らせ
前回は手術前日の19時半に担当医が来て手術が中止になったと告げられた。コロナ禍は依然として続いているので不安は絶えない。案の定、19時過ぎに担当医が来て、またも手術が延期されることになったと知らされた。
理由は執刀医の子供が通う保育園でコロナ感染者が出て、執刀医が濃厚接触者の濃厚接触者になって今日から出勤停止になったと言われた。
1度目の手術の延期は悶々とした気持ちになったものの受け入れた。しかし、今回はそうはいかない。既に体が悲鳴を上げている。また入院もしていなくて、発作も起こっていない人が先に手術を受けたことも引き金になった。
手術の延期は受け入れられないと拒否した。そもそも濃厚接触者との濃厚接触で出勤停止にするという対応は医療崩壊を助長するだけで、国が法律で定めている訳でもなく、納得できなかった。
担当医も一定の理解を示して、上長に相談してみるといって退室した。それから1時間ほどして戻ってきて、別の医師が執刀することになったので予定通り手術ができると伝えられた。
他の患者さんに迷惑が掛からないのか、確認したところ、他の手術には影響しないとのことだったので安堵した。誰かに迷惑をかけては意味がないので、その点は念押した。
2回におよぶ手術延期のやり取りを通して、現場の看護師や担当医は患者ファーストが貫かれている一方、病院運営や経営側については、恐ろしいほど病院ファーストが貫かれている。
患者不在で病院の方針が次々に決まっていき、その決定を患者ファーストの看護師や医師が患者に伝えさせられている。医療現場の最前線で働く方々に患者と経営の板挟み的な負担をかけているのが、透けて見えた。
担当医から手術の延期を伝えられて、上長と相談して結果を持ち帰ってくるまでの間、担当の男性看護師にそのことを話をしたところ、血相を変えて、それはおかしい、私からも先生に掛け合ってみますと言ってくれた。結果云々ではなく心が救われた思いがした。
※院内で盗難事件発生
残念ながら、この看護師は3か月後にテレビニュースを賑わせることになる。報道によると患者の金を盗んだそうだ。その報道では容疑を否認しているということだったので、真実は分からない。
あの正義感のある看護師がそんなことをしていないことを祈るばかり。もし、やっていたとしたら、病院の体質に嫌気がさしていていて、弱い心が顔を覗いてしまったのではないかと思いたくもなる。
事件後、病院から何の連絡もない。検査時に貴重品棚の鍵をその看護師に預けたことが何度もあった。一般的な経営者感覚では他に被害がなかったか、調査するのが当たり前だと思う。
病院のリリース文は下記の通り。ここでも患者置き去りの病院ファーストが貫かれている。当センター元職員の逮捕について・・・
「当センターの元看護師が、当センターに入院中の患者さんに対する窃盗事件の容疑者として、5 月10日に吹田警察署に逮捕されました。当センターとしては、入院中の患者さんの現金が所在不明になる事象を把握しており、警察の捜査に全面的に協力してまいりました。元職員が逮捕されたことは、大変遺憾であり、当センターの患者様を始め関係の皆様に多大なご心配とご迷惑をお掛けしましたことに対し、まずは深くお詫び申し上げます。今後とも、警察の捜査には全面的に協力するとともに、再発防止に努めてまいります。併せて、元看護師等に対しては、事実関係を踏まえ、必要に応じて、厳正に対処いたします。」
2月9日(水)手術手順の説明
手術前日、麻酔医の説明や看護師からどのような流れで術後の看護が行われていくのかといったことを詳しく説明してもらった。
直前の採血や検査を終えて、夜は早めに眠りについた。意外なほど、心は落ち着いていてた。力の及ばない手術のことをあれこれ考えても仕方ない。
前回の手術前に書いた遺書を見返したり、病室がNCU(脳の集中治療室)に替わるので荷物の整理をしたりして過ごした。
もやもや病の外科治療は血行再建術(バイパス手術)を行う。標準術式は「浅側頭動脈・中大脳動脈バイパス術」という、皮膚を栄養している血管と脳血管を吻合する手術だそうだ。
2月10日(木)手術実施
手術当日、直前のどんでん返しもなく、無事に手術を迎えることができた。この長い道のりを振り返ると、そんな当たり前のことにすら、感謝を覚えた。6時前には起床して、トイレを済ませて手術着に着替えてその時を待った。
今日は妻と長男、兄夫婦が付き添ってくれることになっている。といっても手術室に向かう時にエレベーターホールでガラス越しに目を合わせるだけだった。それからストレッチャーに乗って地下にある手術フロアまで行った。
大病院だけにいくつも手術室があり、慌ただしく病院の関係者が行き来していた。モニタールームにもたくさんの関係者がいた。
手術を執刀したり補助したりする先生や看護師だけでなく、モニタールームでバックアップしているようだ。これだけのひとがひとりの患者に向き合って下さること自体に感動した。
手術台に移動して、様々な計器を身に着けたあと、昨日説明を受けた麻酔医の方が来られた。「では麻酔をします、楽にしていて下さい、次に目が覚めたら手術は終わってますよ」と言われた。
笑顔でうなずいた瞬間に意識はなくなった。
『雇われ社長のもやもや日記』1
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