【授業紹介】エビデンスに基づいて風を読め!~実践例から気象データの利活用を学ぶ~
立正大学データサイエンス学部 講師 平田英隆
■気象データの解析法や利活用を学ぶ 『気象データ解析法』
『暑いな(´Д`)』、『今日は雨か。。。』、『風が強いな!』、『さわやかな天気だな♪』のように、皆さんも気象の変化を毎日感じていると思います。気象の変化は個々人の生活に影響するとともに、産業にも大きく影響します。気象庁の調査によると、産業界全体の6割以上の企業の事業が気象の影響を受けているそうです⁽¹⁾。一方で、気象データを利活用できる人材が不足しているという課題があります⁽¹⁾。私が担当する『気象データ解析法』では、気象データの解析法や利活用について学んでいきます。
■スタジアム周辺の風の調査を題材に
2023年度の気象データ解析法には、野球部の学生が参加しています。そこで、気象データの統計処理の入門を学ぶ第2回目(2023/4/21)の授業では、野球部の次の試合(2023/4/29~4/30)が行われる東京都の大田スタジアム周辺の風の調査を題材とすることにしました。野球部以外の学生も、風が打球の軌道へ影響することはイメージしやすいということで、今回取り組む課題の重要性を理解してくれました。大田スタジアムから約5 km離れたところに気象庁の観測点(アメダス・羽田)があります。授業では、この観測データを使用しました。アメダスの過去データは、気象庁によって入手しやすいように整備されています⁽³⁾。
■データ分析を通じて理解を深めていく
過去10年間(2013~2022年)の試合日前後(4/25~5/5)のデータを統計処理することで、スタジアム周辺の風の特徴を調べていきました。さらに、試合が行われる日中にどのように風の特徴が時間変化するかを把握するために、9、12、15時の3時刻を比較することにしました。学生さんも、実際に基礎統計量(平均、標準偏差など)の計算やヒストグラムの作成を行い、風速や風向の特徴を分析しました。
■エビデンスに基づいて風を読む
分析から得られた数値や図からどのようなことが読み取れるかについて、学生さんと一緒に考えていきました。風速については、9~15時の間、時間が進むにつれて次第に強くなる特徴がわかりました。風向に注目すると、9時は南~南南西からと北東~東からの風の頻度が高いのですが、時間が進むにつれて南からの頻度が増大することがわかりました。つまり、試合日の大田スタジアム周辺では、9時頃は1塁側または3塁側から比較的弱い風が吹きやすいのですが、15時頃には1塁側から比較的強い風が吹く傾向があるということです。『このような情報を事前に知ることで、野球の戦術に役立てることができそうですね』ということを確認して、この日の授業は幕を閉じました。
■最後に
気象の変化は、個々人の生活・行動、産業やスポーツなどに影響を及ぼします。このことは、気象データをうまく利活用することで、様々な経済・社会現象の”風”を読むことができることを示唆します。今回、紹介したように、『気象データ解析法』では、実践例を通じて気象データの解析法や利活用を学び、エビデンスに基づいて”風”を読む力を養っていきます。
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【参考文献】
(1)気象庁, 2023:気象庁ガイドブック2023 Ⅶ.民間等における気象情報利活用の推進. https://www.jma.go.jp/jma/kishou/books/jma-guidebook/chapter7.pdf(2023.04.22閲覧)
(2)気象庁:気象データアナリスト活用のすすめ, https://www.jma.go.jp/jma/kishou/books/wda_susume/wda_susume.pdf(2023.04.22閲覧)
(3)気象庁:過去の気象データ・ダウンロード,https://www.data.jma.go.jp/gmd/risk/obsdl/index.php(2023.04.22閲覧)
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・2023年度オープンキャンパス日程
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【WEBオープンキャンパス】7/30(日)、9/3(日)、12/17(日)
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