甘太郎の叫び!(甘太郎のゲーム修行と超時空体の判断)
甘太郎は、ゲームの世界の魔物たちを助けるために、全知ちゃんに連れられて不自由な世界から時のない部屋にやってきた。
甘太郎としては、不自由な世界のことがまだ気がかりだったが、ゲームの世界の魔物たちであってもみんな助けたいと思っていた。
しかしいろいろなゲームの中にはとても残酷なボス魔物たちもいて、そのボス魔物を助けてしまうと、他の魔物たちや冒険者たちがひどい目にあうようなゲームもあった。
甘太郎は、試行錯誤し、何度も失敗しひどく悩んだ末に二つの方法を見つけ出した。
一つ目の方法は、そのゲームのプログラマーにかけあって、魔物たちの残酷な性質の設定そのものを書き換えてもらって愛情深い性質にしてもらうことだった。
これはゲームプログラマーが見つかって同意してくれるとうまくいった。
全知ちゃんは、「そういうゲームクリアというか、やり方もあったのね~」などと感心していた。
ただし、そのゲームのプログラマーが見つからない場合とか、プログラミングの修正にどうしてもゲームプログラマーが同意しない場合にはこの方法は通用しなかった。
悩んだ甘太郎は、仕方なく他の方法を見つけた。
二つ目の方法は、魔物たちも、冒険者たちも、その他のキャラたちも……その残酷ゲームの中のキャラ全員が心から楽しめてまとめて助かるような仕様の他のゲームに逃がすことだった。
しかし、この方法では、どうしてもその残酷ゲームから逃げようとしない魔物やキャラたちは助けることができなかった。
特にボス魔物たちは、どう説得してもなかなか逃げてくれなかった。
そこで甘太郎は、まずは冒険者たちを説得して逃がした。
次に下っ端の魔物たちを説得して逃がした。
下っ端の魔物たちはボス魔物たちや中間管理職魔物たちに酷く扱われていたので、甘太郎の説得がそれなりに通じたのだ。
しかし中間管理職の魔物たちは、ボス魔物たちからいろいろなご褒美をもらっていたので、すぐには逃げようとしなかった。
だが、下っ端魔物たちがどんどんと逃げていなくなってゆくと、中間管理職の魔物たちが今度は下っ端になってボス魔物からひどい目にあうようになってしまったので、次第に中間管理職の魔物たちも逃げ始めた。
そして、とうとうボス魔物とその側近魔物だけがゲーム内に残った。
すると側近たちが互いに喧嘩をしはじめて、甘太郎からの「別のゲームに逃げて!」という悲痛な叫びを後目に、その持っている強力な破壊能力のために互いに殺し合いをして相打ちとなり自滅してしまった。
とうとう最強の防御力を持っていたボス魔物だけが残り、支配する子分の魔物も冒険者もいなくなったので、何もすることがなくなりほとんど永遠に近い時間経過の後に、ついにそのゲームから逃げてくれたボス魔物も出始めたが、完全に知性を失っているタイプのボス魔物は、永遠にそのゲームに人ぢぼっちで留まり続けた者もいた。
中にはあまりにも退屈だということで自分の攻撃力を自分に使ってしまって自殺するボス魔物もいた。
どうがんばっても自殺できないほど防御力があるボス魔物たちは、それもできずに永遠に消えることもできずにそのゲーム内に留まり続けた。
それを哀れと感じてそのゲームを超時空体たちに消してもらえるまで、そうしたボス魔物はゲームの中に留まり続けていた。
みんな助けたいと願う甘太郎が必死で超時空体を説得しなければ、ずっとそのままだったかもしれない。
超時空体たちは、基本、本人の同意や切なる願いがなければ、本人の同意なく助けようとしなかったからだ。
本人の意に反して同意なく強制的に助ける……という行為は、自業自得の責任が問われた場合、きわめて危険な行為だと超時空体たちは理解していたからだ。
どんなに素晴らしい世界に逃がして助けてあげたつもりでも、本人がそれを酷い行為であり攻撃行為だと頑なに主張すると面倒なことになるからだ。
だからどうしても説得して同意を得る必要があった。
だから自分はどうなってもいいからみんなを助けてあげてと願う甘太郎が、そのリスクを背負ったのだ。
そして超時空体たちは、その甘太郎を守った。
そのような願いを持つ甘太郎を確信犯で故意に攻撃する者たちは消す決定をした。あるいは自業自得学園に送る決定をした。
なぜならそうした願いを真摯に持つ甘太郎を確信犯で故意に攻撃する者たちを攻撃する行為ということになればそれはその攻撃者の自業自得の責任の範囲内での抑止行為であり、不当な攻撃行為にならなくなったからだ。
甘太郎にそうするなと言われると、甘太郎を救えなくなるので、甘太郎には内緒で超時空体たちは、そうした。
だが甘太郎はゲームをやり続ける中で成長し、とうとうその内緒だった超時空体たちのしていたことを知ってしまうことになった。
それを知って激怒した甘太郎は、超時空体たちになぜ自分の同意もなくそんなことをするのかと問い詰めた。
超時空体たちは次のように説明した。
「我々がもし、甘太郎が攻撃されているのを知りながら、助けずに甘太郎が魂として消されてしまうようなことを未必の故意で容認してしまえば、我々の責任が問われることになるのだよ。
あらゆる体験者たちを助けたいと願う魂が攻撃されて消されてしまうような世界やその世界の管理者は、自業自得の責任が問われ、その世界もその管理権限も失うことになるのだよ。
だから甘太郎君、君は、我々も助けたいと願っているはずだが、我々がそうした自業自得の責任が問われて、不条理に攻撃されたり消されたりしてもいいとは思わないだろう?」
「はい、当然です。そんな不条理なことは絶対認められません!」
「であれば、あらゆる体験者を助けたいと願っている甘太郎君を守るためにどうしても必要なことはしなければならないのだよ。
全知ちゃんに頼んで、君をこの時のない部屋に連れてきてもらったのは、君を救うためだったんだよ。
君があの不自由な世界の全員をどうしても助けるのだと、あのままさらにがんばりすぎると、あの不自由な世界の支配者たちは君を攻撃し、場合によっては殺してしまうことが予知できていたんだよ。
だから、我々は全知ちゃんに頼んで君をここに救助してもらったんだよ」
「え? そんな……じゃあ、あの不自由な世界のみなさんは、どうなるんですか?」
「君のような願いを持っている者たちは、みんな救助する予定になっているよ。
でも君のような者たちを確信犯で故意に攻撃したり殺したりした者たちやその命令者たちは、甘太郎君が望んでいるようには救けることはできないんだよ」
「そんな……なんでですか? 僕が助けてあげてと頼んでもダメなんですか?」
「それは、そうした者たちが助けられたくないと望んでしまっているからだよ。
つまりそうした残酷で利己的で攻撃的な性質や価値観をどうしても自発的に手放そうとしないからだよ。
そうした性質を消さないと自業自得の責任が継続的に問われることになるから、本当に助けたことにならないんだよ。
だからいったんその間違った性質や記憶をすべて消して0の体験者から再スタートしてもらうか、自業自得学園で自分たちが他の体験者たちにしてきたことを自分が体験して自分の間違いをその自由意志で正せるようにならねばならないんだよ」
「でも、でも……それならそうなるよって僕が説得すれば、みんなそうした間違った心を自分で改めてくれるんじゃないですか?」
「甘太郎ちゃん、それは前に試してうまくいかなかったじゃないの」
超時空体の集まりの中から全知ちゃんが、出てきてそう指摘する。
「でも、それはそうした仕組みだって僕、あの時はまだ知らなかったし、皆も知らないから改めれなくてうまくいかなかったんじゃないですか?」
「いやいや、もうずいぶん前から自業自得の責任を我々は、あの不自由な世界の支配者たちに問うてきているんだよ。甘太郎君が説得に行った時のもっとずっと前からね。
それでも彼らは、甘太郎君のような願いを持った魂を攻撃したり殺してしまったんだよ」
「なんて馬鹿なことを……」
「まあ、肉体は殺されてしまったけど、魂は救助したから、そんなに落ち込まなくても大丈夫だよ」
「え?じゃあ、魂はちゃんと救われたんですか?」
「当然だろう? そうしないと我々の責任問題になるんだから」
「でもそれじゃあ、なんで殺されてしまう前に助けてあげなかったんですか!!!」
「それは、すでにあの不自由な世界が消されることが決まっていたからなんだよ。
あの不自由な世界の支配者たちをまとめて消すために、そうした犠牲が必要だったからなんだよ。
良い願いを持つものたちが彼らに消されることで、我々が彼らを消すことができるようになるんだよ。
そうした者たちは、良い願いを実現するために命を賭けていたんだよ。
だからある意味、それが彼らの本望でもあったんだよ。
そしてもうその犠牲は、良い意志を持った命がけの者たちによってすでになされたんだよ。だから甘太郎君がさらに彼らに殺されなくてもいいんだよ」
「そんな……ひどすぎないですか? 何でそんな犠牲が必要なんですか? みんな助かるようにできなかったんですか? できるでしょう? 超時空体様たちなら!!!」
「そうだね、あの不自由な世界ゲームのプログラムをごっそりとほとんど全部書き換えることができれば、みんな助けることも可能だよ。
でも、それをすることをあの不自由な世界にいる体験者のほとんどが望んでいないんだよ。
自分たちに植え付けられた利己的な本能や欲望や価値観をすべてあの肉体という体験強制装置から消すことに心から同意する者はほとんどいないんだよ。
利己的な生存本能や利己的な支配願望すら消してほしいと願うことができていないんだよ。
むしろそうした明らかに問題がある性質を後生大事に何としても手放すまいと思ってしまっているんだよ。あるものは無意識に、あるものは意識的にね。
肉体という拷問体験強制装置を拷問体験が絶対に発生しない素晴らしい体験を楽しめるだけの装置に改良しようとする断固たる意志も持てていないし、
互いを殺して食べあうような残酷な生態系という仕組みをそんなことをしなくても皆が心から楽しめるような状態に根本から改めてゆこうとも意志できていないんだよ。
それが自然の仕組みなら、そうした残酷な設定であってもその設定を維持し守ってそうした自然に従うべきだとか思っているんだよ。
気象や地殻変動やその他の天災を好き勝手に恣意的に発生させれる良心的にはまったく必要がない残酷体験強制装置すらも誰かが恣意的に悪用して使えないようにしようとすら思っていないんだよ。
さらに電磁波や毒や権力システムなどを使ってあらゆる体験者の心身の体験や運命を好き勝手に恣意的に操作できるようにしようとまでしているんだよ。
霊的世界でも、他の魂を殺して自分の細胞の一部に取り込もうとするような仕組みを改めようと本気で意志できている霊的存在はほとんどいないんだよ。
霊的世界の者たちのほとんどが、自分に何でも従うようなイエスマンや部下や操り人形や家畜や奴隷……を、皆いろいろな手練手管を駆使して求めてしまっているんだよ。
こうしたことを本気で命がけででも改めようとしている者を我々はあの不自由な世界にほとんど見つけることができない。
特にあの不自由な世界の支配階級のトップ周辺にいる者たちの中にそうした意志を持つ者を一体も見つけることができていない。
被支配階級の者たちの中に、たまにそうした者がいても、しばらくするうちに、そうした良心的な魂の多くが、あの不自由な世界の支配者たちの拷問による脅しやいろいろな富や権力や特殊能力や快楽を与えられたりの誘惑などで、次々とそうした手練手管によってその良心を奪われていってしまっているんだよ。
だから我々の世界の者の中には、あの不自由な世界を<良心の墓場>と呼んでいる者もいる。
であれば、ちゃんとした良心を持っている者たちがその良心を殺される前に、あの不自由な世界の肉体という拷問体験強制装置から悪党たちを断罪できる形で離脱してもらう方がいいと我々は判断したんだよ。
そうした者たちの多くが自分の命を賭けてでもそうした断罪を望んでいたんだよ。
だから、肉体の命を失うことを助けなかった……というか我々から見れば、それは助けることだったんだよ。
肉体には寿命があって必ず滅ぶわけだから、肉体の終わらせ方としては、攻撃者を断罪できるなら、そうした終わらせ方の方がいいと彼らは選んだんだよ。
我々は、テレパシーを通じてそうした者たちからその委託を受けていたんだよ」
「………でも、でも、もっと別な方法があったんじゃないですか? そんな断罪とかではなくて、みんなが苦しまずに助かる道があるんじゃないですか?」
「甘太郎君は、どんなもっと良い道があると思うんだい?」
「だって、そんなの悲しいじゃないですか。 世界支配者だって支配されている者たちだってみんな知性があるんだから、世界が消されるんだと伝えれば、真剣に考えて改めようと思うはずですよ。そんな馬鹿みたいな選択を改めようと思うはずですよ」
「いいや、そんなことはとっくに伝えていたんだよ。甘太郎君。特にあの不自由な世界の世界支配者たちには再三伝えてきていたんだよ。それでもあらゆる体験者が助かればいいとの真剣な願いを持っている魂たちまで確信犯で攻撃し殺したんだよ。あの不自由な世界の支配者たちはね……罪のない者や動物たちもたくさんね……残酷な畜産業という行為すらいくら止めるように伝えてもやめなかったんだよ。
むしろ、そうしたことを人々の心や欲望を操作してわざとさせることで、人々を自分たちが家畜のように支配管理できる権利を手にできると思う者たちまでいたんだよ。
そうした心は、みんなを助けたいという心とは全く違う心であり、残酷な支配欲のためにならそれこそ自業自得の法の抜け穴を探してでも何でもしようとする完全にダメな心だったんだよ。」
「そ、そんな……そんな酷いことを確信犯でする者がいるんですか? 嘘じゃないんですか?」
「仕方ない…甘太郎君にはショックだろうけど、それは嘘じゃないんだよ。わざとそうして人々に残酷なことをさせているんだよ。その心を洗脳したり、そうした欲望をわざと植え付けたりしてね…
しかし、それは、そうした確信犯の動機が我々にバレてしまった以上自業自得の法の抜け穴とはならないんだよ。
それは自分の心を制御できなくなって残酷なことをしたくなってそれが悪いことだとすら思えないようにするような特殊な薬をこっそりと飲ませておいて、さあ、この魂は悪いことをしたんだから、同じように悪く扱ってもいいだろう?などと主張するようなもので、その動機がそもそも悪質なので何ら正当性はそこに発生しないし、むしろそうした小細工をした分だけより悪質な犯罪行為だとされるんだよ。
まさか甘太郎君は、そうしたことを確信犯でしている者たちも、その悪い心がそのまま改められていない状態なのに、良い意志をもっている者たちと同じように助けるべきだと思うのかい?
そんなことをそれでよしとしてしまうと、他の魂たちがみんな、良いことをしても悪いことをしても関係なく同じようにその行為の責任も一切問われずに助けてもらえるんなら、悪いことがしたければやったもん得だと思うようになってしまうんだよ」
「そ、それは確かにまずいですけど、超時空体様たちならもっとみんなが苦しまないで済む方法を選べるんじゃないですか?」
「それは例えば、そうした魂たちを完全に他者と関係を持つことができない……つまりは、悪いことをしたくても絶対にできないような苦しみは発生しない牢屋のような世界にそうした魂たちを入れてあげるようなことなら、それをそうした魂たちが本気で望むなら不可能ではないが、そもそもそうした状態を望む魂はあの不自由な世界の悪党たちの中にはほとんどいない。
そんな願いを本気で持てるような魂は、そもそも他者を積極的に加害するような悪党になっていないからね。
自業自得の責任の範囲を超えて本人の合意なくそうした牢屋に魂を強制的に入れてしまうと、我々の未来も牢屋行きとなったりしておかしくなってしまうんだよ」
「じゃあ、悪党たちが実際に悪いことを実行してしまうまで放置するしかないってことですか?」
「そうではないよ。未必の故意でも自業自得の責任が発生するんだから、場合によっては自分がその手で実行していなくても自業自得の責任が発生することもあるんだよ。
だから、我々はあの不自由な世界をいったん丸ごと消すしかないと判断したんだよ。
全知ちゃんからおおよその説明は聞いているだろう?
それはあの世界の現在未来の魂たちを助けるためにやむを得ないんだって。
あのまま放置すれば、今あの世界を消すよりもはるかに膨大な被害者が発生することがわかりきっているからなんだって」
「でも、それは今のままならばって話でしょう? 皆が改める意志を持つようになって改めはじめたら、未来も変わるはずでしょう?」
「だから……その改める意志をあの不自由な世界の支配者たちが持てないことが再三再度確認されてしまっているんだって……
そして被支配者たちのほとんども、もうすでにそうした世界支配者たちに何でも従ってしまうイエスマンや部下や操り人形や奴隷のようにされてしまっているんだよ。
もうそうした者たちの方が圧倒的多数派になってしまっているんだよ。
良心的な意志を持った者たちですら、その心身をすでに支配者たちの操りの糸で操作されるようにされてしまっているんだよ。
しかもそんな状態で多数決で決めれば他の体験者にどんなひどいことをしても許されるみたいなダメな制度まで広げてしまっているんだよ
そんなことまで確信犯でしてしまっているんだよ。あの不自由な世界の支配者たちは……」
「そんなあ………もうめちゃくちゃじゃないか………」
「そうだよ。もうあの不自由な世界は、めちゃくちゃな状態なんだよ。
そんな中で甘太郎君ががんばっても、むしろがんばりすぎると拷問されたり殺されたりするだけなんだよ」
「じゃあ、どうすればいいんですか? そんなめちゃくちゃな状態を超時空体様たちは放置するんですか?」
「あー、だからあのめちゃくちゃな残酷ダメゲームは完全に再生不可能な形で消すって言ってるじゃないか。そしてあのゲームの支配者たちやプログラマーは逮捕する予定だよ。」
「でも! でも、消されたくない人たちもいっぱいまだいるはずでしょう? まだ良い世界にしょうとがんばっている人たちが少なくてもいるんなら、そんな勝手に消すなんてひどいんじゃないですか?」
「そうだね、だから我々は、猶予時間を与えているんだよ。本来ならもうとっくに良心的な魂が攻撃されたり殺されたりした時点であの不自由な世界は消す予定にしていたんだよ。
でも、殺されてしまった良心的な魂の中にも、今甘太郎君が言ったように、まだ良い世界を目指してがんばっている者たちやまだあの不自由な世界にいろいろな未練がある者たちがいるのなら、彼らがいつあの不自由な世界が消えてもいいと思えるようになるまで猶予して欲しいとの要請があったりもしたから、猶予しているんだよ。
だからのほほんとただ漫然と生きるのではなく、良心に反しない範囲であの不自由な世界でやり残しているやりたいことをできるだけ全部やりつくしてしまうようにとテレパシーで皆に伝えてきてもいる。
それと新しく子供を産まないようにとも伝えている。
しかしね……甘太郎君、我々がいくらそうした配慮をしてあげても、あの不自由な世界の支配者たちやその部下たちやさらにはその被支配者たちまで、そうした配慮を無視して自分たちの利己的な欲望を満たすために子供をもっと産み増やそうとか、他の魂をもっと完全に支配してやろうとか、自分だけうまく不自由な世界に生き残れればそれでいいや……とか、その自由意志でそんな選択をしてしまっている者たちもかなり多い状態なんだよ。
だからあまりにもそうした良心的に見てダメな選択をする者たちが多くなって、放置していたらさらに悪い状態に突き進むようなら、猶予期間を切り上げなければならないとも思っている。
例えば、あの世界の支配者たちがあの不自由な世界にいる肉体という拷問体験強制装置をさらに改悪し電磁波や毒を使っていつでも拷問苦を体験者たちに恣意的に強制できるようにしているが、そうした拷問苦があまりに酷いような場合には、そうした猶予期間の切り上げという選択もしなければならないと思っている。
大義のない戦争や天災兵器の使用や権力システムの悪用などにおいても、同じことが言える。
そういう意味では、もういつあの不自由な世界が消されてもおかしくない状態に突入しているんだよ。
その猶予期間を数少ない良心的な魂たちが多大な自己犠牲を払ってなんとか伸ばしている状態なんだよ。
だが、そうした良心的な魂たちまで世界支配たちが自分たちの邪悪な世界支配に邪魔だとして積極的に攻撃するならば、あの不自由な世界はそろそろ終了させねばならない」
「終了って、良心的な者たちも消しちゃうんですか?」
「だから、そうした魂は救助するって言ってるじゃないの!」
「いや、でも、そうでない魂たちも救助してあげてくださいよ!」
「あー、もう甘太郎君は筋金入りだね……さすがにこれだけ説明しても加害者たちまでなんとかして救ってくれと言う魂は稀だよ。
意識や記憶の0クリアや自業自得学園行き以外の方法で、どうしても助けたいなら、どうしても他者の体験の自治権を否定したり奪おうとする悪い意志を手放してもらわねばならないんだよ。
あるいは、他者への支配権力や武力の一切を自発的に放棄してもらって、我々による魂の治療を心から納得した上で依頼する要請をしてもらわねばならない。
甘太郎君は彼らにそうしてもらえるようにできるのかい?」
「やりますよ! 僕、やってみますよ!」
「…………………」
「甘太郎ちゃん、だからそれはこの前やってみてダメだったでしょう?」全知ちゃんが割って入る。
「いや、僕も前よりも進化したはずですよ。こうしたお話を聞いただけでも進化しているはずですよ。だから前とは違ってうまくゆくと思いますよ!」
「………………………」
超時空体たちは、彼らにしかわからない超高速テレパシーで一瞬何やら相談をしていた。
そして全知ちゃんが言う。
「じゃあ、あたしがまた付き添うってことならもう一度だけチャンスをあげるわ。ただしちゃんと今の甘太郎ちゃんのコピーは超時空世界に保管しておきますから、万が一のことがあれば、元に戻る機能で再生できるようにしておくわ。
どうせダメだって言ったら、えんえんとみんなを助けてくれと言い続けるんでしょうから……しょうがないわ……そこまで言うのならやってみればいいわ
ただし甘太郎ちゃんがひどい目にあうようなことになったら、猶予期間の切り上げを強制発動しますからね」