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原野商法という名の呪い

今から半世紀ほど前に流行した、「原野商法」という悪質な不動産売買商法があります。

人里離れた山奥や高原など、ほとんど価値がない土地を根拠のない未来の値上がり情報を提供して高額で売ってしまうという詐欺的手法です。
「新幹線の建設予定がある」
「スキー場ができる」
このような偽の情報を吹き込んで、値段が釣り上ると錯誤させる訳です。

ほとんどタダで仕入れたような土地をいくつにも分筆して、それぞれ数百万円で販売するんですからまともな商売の訳がありません。
そして購入してしまうと、そう簡単には買い手がつかないというデメリットがずっとついて回ります。
行ったことがないような北海道の山林、道路も水道も電気も通らず、夏にはヒグマが闊歩する、そんな山奥の土地を引き取る人はそう多くありません。

ところが、話はそれだけで終わりません。
原野商法の呪いです。

数十年の時を経て、そろそろ相続を考え始める購入者の方へ一本の連絡が入ります。

「あの北海道の土地を欲しがっている人がいるのですが」

原野の土地は、ある種の負の遺産と捉えられています。
これが処分できるなら、ましてや買い手がつくのならそんなにいい事はありません。

「売るためには正確な面積の確定が必要ですね。測量しましょう」

数百万円で買った土地を処分するために、測量費用の20万円はそれほど大きく感じないでしょう。
測量をその不動産業者に依頼し、買い手がつくのを待っていると、連絡はなしのつぶて。こちらから連絡するとキャンセルされたと言います。なんのために測量費用を払ったのか――。

これが原野商法の二次被害です。
消費者センターなどでも注意喚起しているようなのですが、原野所有者の方は何度もこの手の営業電話を受けていることと思います。
測量以外にも、「草刈りをしないといけない」や「道路を通さないといけない」などバリエーションは豊かです。

最近では、原野を買い取る代わりに別の土地(こちらもほとんど価値のない)を購入してくれという不動産営業も多いようです。
結局買い取ってもらえずに、二重三重に土地を抱えてしまう方もいるようです。

初期の原野商法の購入者の方達は相続が始まっている方も多く、子や孫世代が突然降って湧いたように広大な土地所有者になり、知識のないまま二次被害に遭ってしまう。そんな話もよく聞きます。
しかし原野商法的な売り方をされた土地はほとんど値段が付かず――いや、タダでもいらないと言われるようなものばかりで誰も引き取りません。土地の所有者は登記簿でその住所氏名は常に確認されるので、子や孫にまでその詐欺的な営業がついてまわります。

手放すには相続放棄をすればいいと考えがちですが、土地の管理義務は相続放棄をして土地を手放してもずっと付いてきます。管理責任は新しい管理者が現れない限りあなたが負うのです。(そして現れません)
熱海での土砂災害などは記憶に新しいですが、その土地が原因で他人に害を及ぼす災害や、誰も管理していないのをいいことに不法投棄の現場になったりするとその責任はしっかりと取らなければなりません。
それが誰も欲しがらない土地の、呪いともいえる側面なのです。

これは原野に限った話ではなく、地方の放置された一軒家などもそうです。壁が崩れた、擁壁が崩れた、瓦が飛んだ、火が出た、で隣家や他人に被害が及ぶとその賠償請求は所有者にいきます。

処分に困る不動産をどうすればいいのか、今まで多くのご相談を受けてきました。
管理義務と共に不動産を手放すことは可能です。
お困りの方はお気軽にご相談を。(お金を取ったりしません!)

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