見出し画像

賠償責任保険と示談交渉サービス



示談交渉サービス

皆様の身近な損害保険と言えば自動車保険ですよね。自動車保険には示談交渉サービスが付いています。

示談交渉サービスとは
自動車事故を起こし被害者への補償が問題となったときは、加害者、被害者双方の話し合いによる示談で解決することになります。しかし、自身で解決しようとすると多くの時間と労力がかかるので、加害者である被保険者に代わって、保険会社が示談にむけた交渉を行うサービスを、示談交渉サービスといいます。この示談交渉サービスがついている自動車保険の契約では、保険会社が加害者である被保険者に代わって、被害者との交渉に当たります。

自動車保険以外に個人賠償責任保険にも示談交渉サービスが付いている損害保険会社もあります。

相手方との交渉を保険会社が行い、知らないうちに事故が解決される。
すばらしいサービスですよね。実は、示談交渉サービスが付いている損害保険の方が例外だって知ってましたか。

弁護士法第74条

弁護士法第74条に
弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
と、あります。

これは、「非弁行為」と呼ばれ、「非弁行為」とは、弁護士または弁護士法人でない者が、報酬を得る目的で訴訟事件など一般の法律事件に関して法律事務を取り扱い、またはその周旋をすることを業とすることをいいます。
簡単にいうと、「弁護士以外の人が法律のトラブル解決を請け負ってはいけない」というルールです。

「非弁行為」の罰則は弁護士法第77条3号にあるように2年以下の懲役または300万円以下の罰金とあります。かなり重たい罪だと思いませんか?

では、何故、損害保険会社は弁護士でもないのに
示談交渉サービス→「非弁行為」が出来るのでしょうか?

示談交渉サービスが出来るようになった経緯

元々は損害保険会社の示談交渉サービスは「非弁行為」として認められていませんでした。1970年前後、保険会社各社は、「保険会社が示談交渉を代行できるほうが被害者にとっても便利だ」と主張し、保険会社による示談交渉代行を認めるよう、弁護士会に対して求めました。

さらに保険会社各社は、それまで特殊な状況下でしか許可していなかった、被害者から保険会社に対する賠償金の直接請求を認めることで、次のような理屈で、保険会社が示談交渉代行をすることは「非弁行為」に当たらないと主張しました。

「保険会社は当事者として保険金を被害者に払うので、保険会社による示談交渉は本人(保険の加入者)に代わって代理しているものではなく、当事者としてするものなので「非弁行為」にはあたらない。」

この結果、弁護士会と一般社団法人日本損害保険協会との間で覚書が交わされ、弁護士資格を有しない保険会社による示談交渉代行は認められることになりました。

企業賠償責任保険には示談交渉サービスが付いていない

しかし、自動車保険や個人賠償責任保険以外の一般の企業賠償責任保険では示談交渉サービスは付いていません。

また、損害保険代理店が事故の交渉をする事も「非弁行為」として認められていません。

企業賠償責任保険で事故が発生すると保険会社は示談交渉サービスが付いていないからと塩対応。契約者からは保険加入しているのだからと、自動車保険の様に契約者が何もしなくても事故解決が出来ないと怒り出す。これが、企業賠償責任保険の対応の難しいところです。

海外PL保険の約款には「賠償請求を受けた被保険者を防御する権利と義務は保険会社にある」とあります。日本の企業賠償責任保険の約款にも書いてもらいたい文言です。

いいなと思ったら応援しよう!