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クズ社員をクビにしても不当解雇?

労働契約法第16条に
「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」
とあります。


「労務トラブルから会社を守れ!」を読んで


中小企業の社長に上乗せ労災(業務災害補償保険)の話をする機会が多いので、勉強の為に白秋社中村博弁護士が監修した
「労務トラブルから会社を守れ!」を読みました。

本の中の事例で、実際のクズ社員、X氏とします。
X氏をクビにした時に逆にその社員から会社が不当解雇だと訴えられて
会社側が負けたケースを読んで、法律上は労働者は物凄く守られていて、
経営者は労働者を雇う事が罰ゲームな様に思えました。

それは、勤務中に長時間にわたりウェブサイトを閲覧しているX氏に
会社は8回にわたり指導したが改善がみられないので
普通解雇したケースです。

そのX氏は業務に関係ないワイドショー番組や趣味のゴルフテレビドラマを平成27年以降閲覧しており、会社が把握している閲覧時間は、
令和2年4月から同年6月まで、一日平均5時間17分
同年7月から9月まで、一日平均4時間56分
同年10月から12月まで一日平均7時間39分
いったい、いつ、仕事をするのでしょうか?

再三注意しても改善されない、この様なX氏を解雇しても不当解雇とされるなんて信じられませんよね。

裁判所は、8回にわたり指導したものの、一度も書面等をもって注意指導した経緯は無く、戒告等の人事上の措置も講じていないということからも、
X氏の問題行動について具体的にどのような注意指導を行ったか明らかではなく、注意指導の経緯を認めることは出来ないと判断したのです。

要は、書面が無い、指導が解雇に至るまでの段階を踏んだ証拠が無いから
不当解雇だと言う事です。

証拠が無いので、普通解雇事由である「再度」「再々度」の就業規則への
違反行為等に該当せず、解雇は違法無効と判示したそうです。
(東京地裁判令和4年11月4日)

皆様が、この会社の経営者だったら、どう思いますか?
X氏を注意して解雇したら逆にX氏から訴えられて、挙句に裁判で負ける。
経営者なんて、やってられないですよね。

不当解雇とされた場合はX氏に裁判期間中の賃金を支払わなくてはなりません(バックペイ)。
不当解雇の裁判期間は一般に8か月から2年とされています。
仮にX氏の月給が50万円だとすると
2年で50万円×24か月=1200万円になります。
控訴したら、さらに裁判期間は伸びますよね。さらに状況によれば慰謝料も請求される可能性もあります。

雇用慣行賠償責任保険

弁護士に相談して就業規則等を整えて、書面も残しながら段階を踏んで
解雇はしなくてはいけないと思いますが、
こんな時、会社を守る損害保険が雇用慣行賠償責任保険です。
不当解雇等で訴えられた場合の訴訟費用等賠償金が保険金で
受取る事が出来ます。上乗せ労災(業務災害補償保険)の特約として
付保することも出来ますが保険金額に上限があるので、
保険金額を増やしたい経営者様は単独での加入をお勧めします。

経営者様にとっての罰ゲームの様な労働関連法令がある現状、
雇用慣行賠償責任保険の加入は必須だと思います。


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