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自家保険(キャプティブ)と再保険市場

損害保険に転嫁するリスクは巨大リスクだと言われます。
しかし、巨大リスクは企業規模によって異なります。
日本を代表するような自動車メーカーの巨大リスクは何で、どの様に損害保険を活用しているのでしょう。


大企業にとっての巨大リスクとは


中小零細企業が、例えば何億円もする工場や機械設備に掛け捨ての火災保険に加入するのは納得いきますよね。その企業にとって工場や機械設備が火事で焼失することが巨大リスクだからです。

しかし、日本を代表するような自動車メーカーにとって、自社の工場や機械設備が焼失しても潤沢な資金があるので、自力で再建することが可能ではないでしょうか?
全ての工場や機械設備に毎年掛け捨ての火災保険に加入することは合理的でしょうか?しかし、もし火災になった時に保険手当していなければ株主に対して経営者の責任が問われますね。では、どうしているのでしょうか?

ここからの話は、私が実際に、そんな大手の企業の損害保険の担当をしたことが無いので私の想像です、

自家保険(キャプティブ)の活用

自家保険(キャプティブ)を活用しているのです。
自家保険(キャプティブ)とは、自社専用の損害保険会社をミクロネシア等で設立して、火災保険の契約は国内の損害保険会社として、その保険料の多くを自家保険(キャプティブ)出再させて、火災保険のリスクを引受ける手法です。

そうすることにより、大手企業は火災保険のリスクを自ら減らすインセンティブが働き、長年、罹災が無ければ自家保険(キャプティブ)に充分なお金がたまり、再保険の手当ても必要なくなる手法です。

例えば100億円の工場の火災保険の保険料が10億円とすると、10億円の保険料を大手損害保険会社に支払い、80億円分のリスクをキャプティブが引受、8億円を出再させます。初年度だと8億円しか自家保険(キャプティブ)にはありませんので、92億円分の火災保険を再保険市場で手当てします。

再保険市場は保険の卸売市場なので、国内で契約するより安く保険手当が出来ます。仮に92億円の火災保険料が再保険市場で2億円で手当てできたとすると、6億円が自家保険(キャプティブ)に溜まります。
15年間無事故だとしてら、自家保険(キャプティブ)には90億円の資産があり、実質、100億円の工場の火災保険の手当てが、ほぼ完了することになります。

実際には、もう少し複雑ですが大雑把に言えば、こんな感じです。
全て合法にオフシェアーに無税でキャッシュを移す、なんかずるくないですか?

この方法で中小企業でも事業継承対策の資金をオフシェアーに流すスキームが10年近く前に流行りましたが、税務当局に見つかり、現在は、無税では出来ません。

自家保険(キャプティブ)は、海外にお金を流すスキームだけでなく、大手保険会社が引受けを嫌がるリスクを自ら保険化して解決できるスキームでもあります。

私も企業火災の地震リスクについて自家保険(キャプティブ)の組成に間接的に関わったことがありますが、主に海外での事なので概略的な事しかわかりません。

日本では沖縄を金融特区にして、自家保険(キャプティブ)の設立が出来る用にする動きもありましたが、今は、ハワイやミクロネシア、主に英連邦でしか設立は出来ません。

私たちには直接は関係ありませんが、リスクマネージメントの教科書には初めの方に出てくるので、こんな手法もあるとお話しさせて頂きました。

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