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なぜ、ライズ学園だったのか?
自分のペースで学び直せる所ってない?
当時、私が勤務していた学校にも、部屋に引きこもってなかなか姿を見せてくれない子や、反抗的な態度で教室を飛び出して行く子がいました。そんな子たちが気を取り直して、
「行ってみようかな?」
「がんばっからよ!」と言って教室に戻っても
「やっぱダメ、授業がぜんぜんわからない」といって、また足が遠のいてしまう。そんなことを繰り返す中で、何人かのお母さんから聞かれたのが、
「自分のペースで、学び直せる所ってないんでしょうか?」ということでした。
当時は適応指導教室もなく、相談室や保健室などで空き時間の先生が学習を見たりしていました。家庭訪問を繰り返していた先生もいましたが、それでも限界はあります。学校の先生たちからは、
「個人情報でもあって、大っぴらにできないこともある。けれどそれを言わないでいると、『何もしていない』と責められることもある」という声も聞こえていました。
おれだって、がんばってみたことはあるんですよ
一方で、漢字のへんとつくりを左右反対に書いたり、数学では満点を取るのに国語の音読は大の苦手、英単語の書き取りテストはほぼ 0点 といった子もいました。不登校ではなくても、教室で暴れたりすることはなくても、じっと、石のように固まって日々をやり過ごしている子もいました。
ある生徒と話したとき、
「いつも○○は『自分はバカだ』っていうけど、決めつけてしまっているだけじゃないだろうか? こんなにしっかり話ができる〇〇が、できないはずはないと思う」と言うと、彼は
「だから先生は、わかってないって言うんですよ」と、苦笑いを浮かべました。
「おれだって、がんばってみたことはあるんですよ。だけど何だかできない。英語の b とか d とかは、おれだって簡単だと思いますよ。だけどそれが頭に入ってこない。要するにバカだっていうことでしょ」
「それこそ、気持ちの問題じゃないのかなぁ」
「そうかもしれませんね。けど、毎日、あの堅い椅子に座って、ついていけない授業をわかっているような顔をして受けている、そんな気持ちがエリートの先生にわかりますか?」
4半世紀以上も前のことですが、こういった声を聞く中で、
「ならばいっそのこと、子どもたちが自分のペースで学べる場所を立ち上げられないだろうか」と思ったのが、39歳で退職をしたおもな理由です。
「やめなきゃ始まらない」で始まって
計画性に乏しい私は、そのための貯金をしたりはしていませんでした。
「きちんと準備をしてからにしたら」といってくれた人もいました。しかし「そんなこと言っていたらいつまでも始められない。やめなきゃ始まらない」といって、私も学校を飛び出ました。
「学校にいても、できることはある」と助言をしてくれた人もいましたが、ぼんやりながらも私がイメージしていたのは、これまでの学校とは別のもう1つの場、地域ぐるみで子どもたちの学びと育ちを支えられるような場作りでした。
それが今日まで20年以上も、よくぞ活動を継続できたものだと思います。その間には、批判を受けたこともありましたし、リースし始めたばかりの大型ワゴン車が盗難にあったこともありました。それでも今日を迎えられているのは、本当にたくさんの良い出会いに恵まれ、多くの方々に支えていただいたおかげです。
それこそいろいろな子がいて、今でもスタッフは、
「もう少し背中を押した方が…」
「でも、無理強いをしても…」と、いった話し合いを日々繰り返しています。そして、そうしている間にも、不登校は増え続けています。
むすびつくばライズ学園 は、いわゆる不登校といわれる状態にある子を対象とした フリースペース / スクール としてあるべきか? それとももう少し対象を広げて、1つの選択肢としての オルタナティブスペース / スクール のいずれを目指すべきか、私たち自身も相談を重ねています。
2月12日(祝)には、今年度最後のオープンスクールを開催します。今回は全国どこからでも参加いただけるように、オンライン開催としています。
皆さんと私たちでは、目指すところなど異なるかもしれません。しかし、私たちの実践の中で参考にしていただけることもあるかと思います。また、ご意見やご感想をシェアさせていただくことで、私たちにとっても、皆さんにとっても今後の活動に生かせる会にできればと思っています。
2024年2月9日(改) 小野村 哲
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