モノローグでモノクロームな世界
第五部 第一章
二、
ナインヘルツの本部から遠く離れた東方の一角、十月国にあるのが、ナインヘルツ東方支部だった。ここでは、主に十月国を始めとする東方の三国を管轄している。それぞれの国の境に設けられている検閲所からの通報を対処するのも、東方支部の役目の一つだった。
こうした支部は、世界の東西南北に一つずつ設けられ、ナインヘルツ本部と共に社会システムの維持や国同士の調整を行っている。支部には、支部長が一人、その下に上級検閲官が複数名、そして検閲官と続く。よく検閲官と同一視される入国審査官は、各国の管轄であり、ナインヘルツとは本来、関わりを持たない組織である。
だが、国の出入国数や国の運営そのものに、ナインヘルツの意向が大きく影響している現状を鑑みれば、どの国の機関もナインヘルツに迎合した方針を取るのは明白と言えるだろう。
そして、このようにナインヘルツという一機関その物に、世界を左右するほどの大きな影響力を齎したのは、トリプル・システム、そしてThe Beeによる所の力が大きかった。
「それにしても、ここ最近、やたらサカイへの出動が多いですよね。前は、都市部が多かったっていうのに。」
「まぁな。この世界で今や自分達の意思を持って、機関に歯向かうのも、もはや、あそこの住人ぐらいだからな。それに、サカイはワームと関わりがあると上が睨んでいる。」
郊外へと続く車道はどの道も行き交う車が少ない。
車窓越しに通り過ぎていく街は、まるで人が住んでいないかのように静まり返っていた。
緊張からだろうか。副島は、先程から、自分達一行の一挙手一投足を見逃さないように監視しているかのような、どこか張りつめた空気を感じていた。
副島とカランが乗った車両の後方には、検閲時に使用する取締り用の武器や銃弾の束が積まれていた。それらは、殺傷能力としての性能は低い物の、武器としては十分に通じる物だった。
副島達が乗った車両を含め、同じような車両が全五台、彼らの前後に続いている。この計二十人前後の検閲官で構成された部隊こそ、ナインヘルツ東方支部第一取締部隊だった。
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