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モノローグでモノクロームな世界

第四部 第三章
四、
 あの日、病院で私を待っていた彼の瞳に映る私に対する戸惑いと、紛れもない絶望の色。
あの色を見た瞬間、私は自分自身が恥ずかしくなり、それと共にもう後戻りも取り繕うこともできない状態まで来てしまった事を悟った。

私は、もう彼が憧れていたあの頃の私に戻ることも、あの頃の私の振りをすることもできない。私は彼の為に何もしてあげられない。彼の理想の人間を演じることもできない程、私は醜く地に這いつくばっている虫にすぎない。

 病院からの帰り道、久しぶりに隣を歩きながら、いつか彼が話していた言葉を思い出した。
『飛ぶ、なんて漢字、名前に入っているけれど、飛び方なんて忘れてしまったんだ。』

あの時、私は彼に答えた。
それは、今でも変わらない。
真飛は、いつでも飛び立つことができるはずだと。
遠く、遠く、行きたい場所へ飛び立てると。
だから、私の翼を貴方へあげる。
役立たずで、もうぼろぼろの片翼だけれど、また飛べるように。

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