アレグロ・バルバロ 14
翼をもう一度、生き返らせる?
そんな方法、知る訳ないじゃない。
道行く人々皆に聞いてみたが、皆、口を揃えてこう答えた。
森深くで出会った少女達も。
同じ服を着て、そっくりの笑みを浮かべる少女達の胸元で、結われた蝶々結びが、風で一斉に揺れる。手を繋いだ彼女達は、楽しそうな声をあげながら、尋ねたハナの周りをぐるりと取り囲んだ。
楽しそうに弧を描きながら、右に左にステップを刻む彼女達を円の中心からハナは眺める。
ひらひらヒラヒラひらひらヒラヒラ。
左回り。右回り。
ヒラヒラひらひらヒラヒラひらひら。
紺色のスカートのプリーツが生き物のように一斉に揺れ動く。
けらけらケラケラけらけらケラケラ。
ケラケラけらけらケラケラケラケラ。
「ねぇ、そんな下らない事なんて聞いてどうするの?」
「く、くだらなく何てないの。・・・・・・私にとっては。」
「だったら、あげるわ。」
「え?あげるって、何を?」
「大切な物。」
「大切な物?」
少女達はハナの周りをくるくると回りながら口々に話す。
「そう、とってもとっても。」
「とっても、大切な物。」
「なくしちゃいけないわ。」
「もうなくしちゃ駄目よ。」
「あげるわ。」
「アゲル。」
「私から貴方へ。」
「あげて。」
「あげる。」
「アゲル。」
そうして、ハナの手に小さな木の箱を載せると、円を解き一列に森の奥へと歩いていく。
「待って!ねぇ、これ、どうすればいいの?」
ハナの呼びかけに、列の一番後ろにいた少女が振り返った。
「海岸に行くといいわ。そこで会った男にその小箱を渡しなさい。
それで、貴方の願いは叶うから。」
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