モノクロの写真

モノローグでモノクロームな世界

第一部
第三章 一、
 マドカの赤い血は、彼女自身を美しく彩り、僕の白い世界を真っ赤に染め上げた。彼女の色は僕に、この世界から色が無くなったわけではなく、僕らが色を喪ったという事実を突きつけた。

 あの時、僕が見た色は『赫』だった。
白でもなく、黒でもなく、灰色でもない、深紅の赫。
視覚はまだ色を感知できる。
記憶は、感情は、脳は、心は、
『まだ色を覚えている。』
それなのに、僕らは一体どこで色を忘れてきた?
彼女は最後に僕にこう言った。
『この世界にイロを取り戻して。』
一体、どうすればいい?
一体、どうすればこの世界に色を取り戻せる?
一体、どうすれば彼女の願いを叶えられる?

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