見出し画像

アラベスクもしくはトロイメライ 20

第四章 四

9月14日(火)
 砂奈に昨日、私の秘密を話した。彼女は寝ていたようだから、聞いていたのかは解らないけれど。もう、ぎりぎりで誰かに話さないと耐えられそうになかった。だから、話した。
それなのに、今、酷く後悔しているなんて。
なんで、あんな事話しちゃったんだろう。しかも、あんな場所で。
誰かに聞かれていたらどうするつもりだったの?
でも、それでもいっか。
あーあ、もういっその事、何もかもばれて、終わりにしたい。

本当はね、
一番怖いのは、砂奈の反応。
もしも、私の話を聞いてて、もしも砂奈が今まで見たいに接してくれなかったら?もしも、ママやお兄ちゃん達のように、私の顔色ばかり窺うようになったら?
私、きっと耐えられない。

名も無い私は、どこかに消えるの。
何度も本当の名前を思い出そうとしてみるけど。
・・・・・・もう、何も思い出せないよ。
本当の私は、どこに行ってしまったの?
このまま、明日が来なければいいのに。
このまま、目が覚めなければいいのに。

名もない私は、誰にも気づかれない、永遠に透明な存在。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?