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アラベスクもしくはトロイメライ

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2017年7月の記事一覧

アラベスクもしくはトロイメライ 5

アラベスクもしくはトロイメライ 5

 花園風花との思い出の中で、一番印象的だったのは、やはりあの図書室での一幕だろう。彼女は放課後、よく遅くまで図書室に居た。
私も普段から多くの書を読むが、彼女は思えば私以上に読書家だった。いや、彼女のあれを読書家と一言で括るのは間違っているように思える。そう、どちらかと言えば、活字中毒と言った方がしっくりくるだろう。それも、文字通りの。
 私の読書スタイルは、国内外を問わず推理小説を偏愛、偶に気が

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アラベスクもしくはトロイメライ 4

アラベスクもしくはトロイメライ 4

5月7日(金)

 今日初めて、樋賀砂奈と話した。
彼女はやはり私が睨んだ通り。巧みに隠しているからこの秘密に気付いている人はいないだろうけど。
でも、不思議なのは彼女がなぜそれを実行しようとしないのか、という事。真っ白な手首は、傷ひとつついていなくて、奇麗そのもの。まぁ、他の方法で試しているのかもしれないし、それとも他に躊躇うような何かがあるのかもしれないし。
ま、どーでもいいか。
私は名が欲し

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アラベスクもしくはトロイメライ 3

アラベスクもしくはトロイメライ 3

 「だから花園さんが死んだ原因を調べるんですって。それで警察が近々入るから、私達1Bの生徒にも話を聞くことになるだろうって。って、聞いてる?砂奈さん。」
石澤さんからその電話を受けたのは、風花が冬の海に飛び込んだちょうど二週間後の事だった。
 石澤蘭佳(いしざわらんか)。
私達1Bの学級委員を買ってでた典型的な優等生タイプの彼女が、私は苦手だった。今時珍しいぐらいにきっちりと編み込まれた三つ編みと

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アラベスクもしくはトロイメライ 2

アラベスクもしくはトロイメライ 2

 花園 風花。
お花畑から飛び出してきたような名を持つ彼女と初めて出会ったのは、私達が真新しい制服に身を包んですぐの事だった。淡いブルーが基調だった中等部と異なり、濃紺が基調のその制服は、デザインが同じでも私達には新鮮で、中身は数日前と全く変わっていないというのに、皆、少しばかり大人になったような気がして舞い上がっていた。その中で、花園風花ただ一人が、落ち着いていたように思う。透き通るような肌も、

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アラベスクもしくはトロイメライ

アラベスクもしくはトロイメライ

第一章『私達の頭はもぎ取られた。胴体はもう無い。足が二本と頭だけの私達は、地を彷徨い続ける。』

一、

 真っ白な雲がどんよりと重く立ち込めていた。

手を伸ばしたら届くかな。そう言っていた彼女は、空に飛び立つのとは真逆の、冬の海へと沈んでいった。伸ばした手も届かない、深い奥底へ。揺らぐ髪も、ゆっくりと閉じた瞳も、静かにほほ笑んだ風花の顔もこれから先、私は一生背負っていくのだろう。花園風花がそれ

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