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【看護師を目指したきっかけ①】温厚な祖母との言い争い

小学3年生、
「ガン」という病気に
胸騒ぎがしたときのおはなし。

癌になった祖父

わたしが小学3年生だったある日、
大好きな祖父が癌を宣告されました。

もともとヘビースモーカーだった
祖父の癌は肺だけにとどまらず
胃にも転移していて、その時点で
完治は難しいのが実情だったようです。

…でも、能天気な小学生のわたしには
そんなことは
知ったこっちゃありませんでした。(苦笑)

小学生には「ガン」なんて分からない!

たまに風邪をひいたり、
インフルエンザになったり。
その程度の経験しかないわたしにとって
癌という病気は馴染みのないものでした。

(おじいちゃんはガンを治したら
またおうちに帰ってくる!)
(帰ってきたら、また遊んでもらおう~)

「ガン」と聞いても、
"ちょっと長引いている風邪"くらいにしか
思っていないわたしは、
入院した祖父が家にいないのは
一時的なことだと思い込んでいました。

(またおじいちゃんとおばあちゃんと
笑いあって過ごす日々が近いうちに
戻ってくる...!)

そう信じていました。

ある日までは...。

いつもと違う祖母

———
その日は学校が休みで、
わたしは午前中から近所に住む友達と
外遊びをしていました。

お昼になって家に帰ると、祖母が
祖父のお見舞いに行く準備をしています。

祖母はわたしに気付くと声をかけてきました。

「りさちゃん、
お昼からおじいちゃんのところに行くから
出かける前にお友達にバイバイしておいで。」

………。

小学生にとって遊びは最優先事項です。

(もっと遊びたいのに!)
(なんで病院なんかに行かなきゃならないの?)

気づけばそんな感情を素直に口走るわたし。

「りさ病院行かない!友達と遊びたいもん!」
「おばあちゃんは行ってくればいいじゃん。」

………。

悲しそうな顔をした祖母。
でもそれは一瞬のことでした。

「何でそんなきかん(ひどい)こと言うの!」
「じいちゃんはりさちゃんが来るのを楽しみに
待っとるのに!」

………!
(えっ?)

優しくて温厚な祖母が
感情的に声を上げるのは完全に想定外です。
そんな珍しい剣幕に
"何か気づかなければならないことがある"
と思ったのは束の間で...。

それでも遊びたい気持ちが強かったわたしは、
「いやだ!行かない!」と言い放ちます。

...言ってしまった後で
"しまった!まずい!やってしまった!"
なんて思っても後の祭り。

ついに祖母は
「もう知らん!好きにするこっちゃ!(勝手にしなさい!)」と言い放ち、
父の車に乗って病院に行ってしまいました。

………。

胸騒ぎの正体を求めて

こうして
ポツンとひとり取り残されたわたし。

「いいもん!遊びに行くもんね!!」

…そう思ったのは最初だけでした。

冷静になればなるほど
押し寄せてくる後悔の念。
そして、何かわからないけれど
"何かがある"と感じる胸騒ぎ。

居ても立っても居られなくなったわたしは、
気づけば何かに突き動かされるかのように
走り出していました。

向かう先はただひとつ。

友達の家に寄り、
「ごめん!また今度遊ぼう!!」とだけ伝えて
向かったのは祖父のいる病院。

(おじいちゃん、待っていて!)

こうして、いつもは車で15分の道のりを
短い脚をフル回転させてズンズン進むのでした。
———

いつもは寛大な心で接してくれる祖母の
余裕がなく、取り乱した様子から感じる
違和感。

健康が当たり前だと思っている
このときのわたしはまだ、
祖父が癌に生命を蝕まれているなんて
知る由もありませんでした。

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