【看護師を目指したきっかけ②】病室で祖父と起こしたプチ事件
小学校3年生、
癌で入院する祖父の影響で
"看護師"という存在を
意識するようになったおはなし。
弱っていく祖父
初めてひとりで病室を訪れたわたし。
久しぶりに一対一で向き合った祖父は、
いつもみんなでお見舞いに行くときとは
少し違って見えました。
———
(ひとりで来てしまったけど、怒られないかなぁ。)
(あれ?そんなことより、おじいちゃんって
こんなに弱々しかったっけ??)
血管の浮き出た細い腕に点滴針を刺している
祖父は、ベットのすぐそばにある椅子に座って
いました。
「おじいちゃん。」
わたしは意を決して声をかけます。
「おぉ、りさちゃん、ひとりで来たんか?」
「うん、今日はひとりで来たの。」
もしかしたら
"小学生がひとりで病院に来たらダメだろう!"と怒られるかもしれないと覚悟していたけれど、
どうやら取り越し苦労だったよう...。
「ここまで歩いてきたんか?」
穏やかな口調で問いかける祖父。
「うん、じいちゃんに会いたくて歩いてきた!」
(病気になる前のおじいちゃんだったら、
怒っていたかもしれないなぁ...。)
一瞬そんな考えがよぎったけれど、
何はともあれ祖父が怒っていないと分かって
元気に答えるわたし。
それからは二人で
学校のことや祖母のことなど、
他愛のない話を楽しみます。
会話をしながらも、あまりにも儚くて、
今にも消え入ってしまいそうにみえる
祖父の様子に泣きそうになったのは
ここだけの話。
———
身勝手な行動が教えてくれた自分の無力さ
そんな矢先に起きたある事件。
「将来はお花屋さんになろうかなぁ~?、
それともケーキ屋さんがいいかなぁ?
あ、やっぱり小学校の先生にする??」
なんて妄想している
脳内お花畑少女だったわたしは、
これをキッカケに「将来」について
考えるようになります。
...それは、祖父とわたしが
しばらくおしゃべりを楽しんだときのこと。
ずっと同じ体勢で座っていた祖父が、
椅子からベッドに移動しようとしたときのこと
でした。
———
「ちょっと、そっち(ベッド)に行くわ」
そう言って立ち上がろうとする祖父。
...けれども、脚に力が入らないようです。
「りさが手伝ってあげる!」
どうにか祖父の役に立ちたいわたし。
「...いや、じいちゃん、
もうちょっとここ(椅子)におるわ。」
さすがに小学生の身体では支えきれないと
判断した祖父。
しかし、わずかな沈黙を逃さなかったわたしは、
すかさず言います。
「りさにつかまって!大丈夫やから!」
やる気満々のわたしに負けた祖父は
わたしに体重を預けてきました。
(よーし!どーんとこい!)
なんて思ったのは、ほんのわずかの間だけで...。
(ん?意外と重い。
しかも思うように誘導できない...!(焦))
「大丈夫か?」
心配そうな声に、力を振り絞るけれど
筋力の限界はすぐそこまで来ていて...。
(あっ...!)
ガタガタガタガタ。
ベットの端に引っかかるように横たわった
祖父を見て、サーッと血の気が引くわたし。
それと同時に激しく騒ぎ出す心臓の鼓動。
(おじいちゃんが骨でも折っていたらどうしよう!
死んでしまったらどうしよう...!)
下手に動けない状況の中、
パニックになりながらも目に入った
ナースコールのボタンを押し続ける...!
(お願い!早く来て...。)
長かったのか、短かったのか。
看護師さんはわたしたちを見ると
まずはわたしを祖父から離し、
そして祖父をベッドに寝かせてくれました。
冷静沈着で、無駄のない動きを目の当たりにして
ボーっと立ちすくむわたし。
「無理な行動はしないでくださいね。」
そう言うと看護師のお姉さんは出て行って
しまいました。
...あっという間に二人の空間に戻った病室。
「おじいちゃん、大丈夫だった?」
「心配せんでも大丈夫や。」
「おじいちゃん、ごめんね...。」
———
脳裏に焼きついた看護師の姿
その日の夜、布団の中で思い起こされた
自分の無力さ。
"あのときの看護師さんが自分だったら、
おじいちゃんを助けてあげられたのにな~。"
わたしはこの日をキッカケに、
病院に行くと看護師さんを
目で追うようになったのでした。
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