「落日」
君はもう行ってしまった
あの線の向こう側へ
瞼の裏にも
脳裏にも
どこにもいない
君の背中が
ひしゃげた午後の陽に
逃げていった
戻ってこいとは言えず
震えていたのは僕の手の方で
折れた骨が
元に戻ってしまう前に
なんとか思い出したかったんだ
まるで
あの日の僕のような
もうどこにもいない
君の
ひしゃげた痛い叫びに
躊躇したはずなのに僕は
僕の足は
あの遮断機をへし折って
秒速で飛び込んで
吐き気を蹴飛ばして
手を伸ばした
残影に
取り残されて
びしょびしょになろうとも
そこにいた
泣いていたのはどちらだろう
今日の僕か
あの日の僕か
けれど君は静かで美しかった
どちらともなく
ひしゃげていく魂が
やっと
重なった
その瞬間を見た人はいない
そんなことに
もう絶望しないでいい
誰の目にも止まらずにいったんだ
でも振り返ったその瞳が
僕を見ただろう
僕だけを見て
忘れそうになりながら
忘れられずにいた
傘の下の僕に
君は