夜と朝がくること
大好きなアカウントが何個かある。
そのうちのひとつが、海外在住の方のもの。
私は行ったことのないその国は、いつも青空でカラッと晴れ渡っていて、お国柄としても多分おおらかでサバサバしてる、そんなイメージがある。
アップされる写真から感じられる、そんな街に流れる空気感というか、雰囲気が、私にはすごくいいなあ、って感じられた。
私が、田舎の山育ちで、一年のうち、どんよりと曇った日が断然多いような所で育ったせいもあると思う。
いつもあったかくて、青空が広がっている。
色で言ったら原色のような鮮やかさのある国。
そんなイメージだった。
でも、ある時、アップされた写真は、その国の街角の、夜の交差点だった。
きれいな夜景、とかではない、ごく普通の交差点。
信号があって、ライトを点けた車やバイクがごく普通に走ってる。
それを見て、私は、あ、この国にも夜があるんだ、って、バカみたいなことを思った。
当たり前だ。
でもなぜか、年中青空のイメージのその国には、夜なんかないような気がしていたのかもしれない。
私のわるいクセだ。
自分はあったかい家庭に育たなかった、というコンプレックスがずっとあって、あったかい家庭に育った人は、もうつらいことなんてなくって、幸せいっぱいな人生を歩んでいる、みたいに思ってしまいがちなところがある。
本当は、どんなに幸せそうに見える人だって、いろんなものを抱えていたり、人には言えないつらいことを乗り越えてきたり、そんなのが必ずあるはずなのに、なんか、イメージだけで判断しちゃう。
どんな国にも、夜があって当たり前なのに。
Eテレの0655で流れる、「朝が来た!」という曲が私は大好きで、子供が小さい時からよく聞いていた。
「朝が来た 朝が来た 今日も朝が来た
昼が来る 昼が来る そのつぎ 昼が来る
地球が半分回りゃ そのつぎ 夜が来る
もう半分回ったら つぎの日だ」
「今日も朝が来た」
「だから大丈夫」
この歌にたくさん勇気付けられてきた。
そう、夜があっても、その次には朝が来るから、大丈夫なんです。
災害とか、震災とか、病気とか、そんな非常時には、もう朝なんて来ないんじゃないかってそんなふうにも思ってしまう。
夜が明けるまであと何時間、それさえ耐えればいい、って、日の出までのカウントダウンをしたくなる。
そうして、朝日を見るとホッとする。
生き延びた、みたいな思い。
朝が来るのは当たり前だけど、でも本当は、前の晩に寝て、次の日の朝、絶対に目覚める保証なんて、どこにも、誰にも、ないのかもしれなかった。
だから本当は、朝が来たこと、目が覚めたこと、手足が動くこと、全部奇跡みたいなことなのかもしれなくて、ああ、今日もまた、新しい一日を与えてもらえた、って感謝してもしきれないくらいのことなのかもしれない。
そうやって、新しい一日をありがとう、の気持ちと共に一日を始められるような心持ちになれたら、それは、すごく素敵なことだと思う。
でも、その一方で、仕事行きたくないなーとか、くそ眠いなーとか、だりーなーとか、そんなふうに思ったり、言い合える日常というのも、それもやっぱりとてつもなく幸せな日常だとも思ったりする。
夜が明けたこと、新しい朝を与えてもらえたこと、そんなことを意識すらしなくてもいいこと、それは、やっぱり、とてつもなく幸せなことだ。
明日目覚める保証はない、とか思ったり、私はいつもテンションもメンタルも常に低い。
この間思ったのは、私の魂の主旋律は多分、葬送行進曲とか、その辺りなんじゃないかって(笑)。
あるいは、ピアノでいったら、黒の鍵盤を多様するような、不協和音というか、そんな感じの曲。
その辺りが多分一番落ち着く(笑)。
精神世界の学びを通じて、波動を上げること、重苦しい気持ちを手放して軽やかになることの重要性は十分理解してきた。
それが何より、自分自身がラクに生きられるということも。
それでもやっぱり私は、落ち着く場所というのがあって、それは、たとえるなら、暗くて冷たい、深い海の底、のような場所なのかもしれなかった。
『池の底から見る景色は、とても美しいの』
『あなたもそれを見られる場所に今、立っているの』
雪の降る、寒い日に、池の鯉が教えてくれたこと。
冷たくて、暗い場所にいるからこそ、光の美しさやあたたかさが、より鮮明に分かるのかもしれなかった。
「ディープブルー」というドキュメンタリー映画のDVDを見たことがある。
その中で、深海の生物の様子が描かれていて、その生物たちの、精緻な美しさに、私は目を奪われた。
ああ、地球は、決して人間のためだけのものではないんだ、とも思った。
だって、人間が普段目にすることのできない深海に、こんなにも美しい世界が拡がっているんだもの。
神様は、こんなにも美しいものを、人間に見せるためではなく、創り上げているんだもの。
深海の世界は美しい。
暗くて、冷たくて、誰の目にもとまらないかもしれなくても、絶対に美しい。
だから、あなたは、あなたの深海を泳ぎ続けてください。
その深海には、たくさんのたくさんの光が宿っています。
その深海を超えた時、あなたの中の光が、びっくりするほどの光が輝きます。
闇を超えた時、あなたは驚くほどの光を纏って輝きます。
光と闇は同じだから。
だから、闇の中にいることを決して卑下しないでいてください。
いつか光に変わるから✨