映画 『バッド・エデュケーション La Mala Educación』
(前回の 『パーフェクトブルー』に続いて 複雑な構成のお話のため、ネタバレを含んでおります。)
劇中劇の部分、過去の部分、事実の部分、嘘の部分など 色々なことが明らかになっていき、全てが繋がっていくお話。
最初は イグナシオが主役のストーリーだと思って見始めたのだが、途中から エンリケが主役になっていったように思う。
全て見終わった後の感想をシンプルに言うと
「エンリケ かわいそう」
である。
が。
この映画の登場人物は 誰しも『バッド』な部分を持っている。
その中の筆頭が 『エデュケーション』を施した 神父だということは 間違いない。
神父から性的虐待を受けた経験がある人たちは「Surviver (生還者)」と呼ばれるそうだ。日本に住んでいると宗教的なことに対して実感がない部分があるが それでも にっちもさっちもいかないときに最後の手段として「神頼み」をしていたりする。
神学校に通っている子どもたちにとっては 「神」というのは絶対であり、その神の言葉を伝える役割を持っている神父から虐待を受けてしまった場合、救いを求めることができる場所はどこにもない。人生に対しての希望を失って 自ら死を選ぶような暮らしに至ってしまう人が多いため、その状況から立ち直れた人という意味でこの呼び名が使われているそうだ。
イグナシオが 薬や盗難に走ったのも ある種の自傷行為だったのだと思う。
整形して自分を変えていくこともそれに含まれるのかもしれない。
イグナシオにとっては 自分の初恋の相手であるエンリケこそが「神」であり 唯一の救いとなっていたのかもしれない。
では、フアンの目的はなんだったのか。
俳優として成功するためにエンリケを利用したのか、とも思ったが イグナシオが死の直前にエンリケのことを思って書いた手紙を渡したところに、フアンの本当の意図があると考えたい。
エンリケが 監督として成功して 本当に良かった。