近頃
自分でもよくこんなに引きずってんなあと思う時がないわけではない。
付き合っていた期間だってほんの少しだったし、別れてからもう半年近く経つのに、一向に彼のことを諦める気配も他人を好きになる気配もない。
かといって彼とまた復縁できる確証があるわけでもないし、結婚するだの言っているのも私だけだし。
彼が通っている学校の職員であることから、こんなことを相談できる友人がそもそも少ないし、最近は友達や兄から彼のことを「クズ野郎」と言われるのにも慣れてしまった。
彼にすら「自分よりいい人なんて絶対他にいっぱいいる」と言われているのによく冷めないな、と我ながら感服してしまう。
今までの私の恋愛の傾向からして非常にイレギュラーな事態だ。
彼を好きになった去年の夏頃も不毛すぎる(今となってはもはや笑い話な)片思いをしていたのだが、それの踏ん切りをつけてくれたのは相手の誕生日のインスタのストーリーだった。
彼の彼女らしき子(セフレらしいんだけど)と遊びに行っている様子をお互いの顔やらは写さずにあげたり、夜には明らかに同じテーブルなのに違う料理をストーリーにあげていた。
2人のそのストーリーを見て色々と察しまくったメンヘラな私は瀕死に陥ってしまい、昼間っから免許合宿先の寮の自室でひたすら泣きまくっていた。
まあ、その日だけはひたすら泣きまくって、次の日に担当の先生にこの話をしながら教習を受けたり(逆に私も先生の色んな話を聞いたのでおあいこ)、死にたくなる気分を誤魔化すために永遠に海沿いを歩いたり、彼への想いをひたすらしたためて純猥談に投稿したりもした(なんとnextA面にまで載った)。
そうするとみるみるうちに気持ちは萎んでいき、『順番が違っていたら私もセフレコースだったんやぞ!!』と言い聞かせることで、たまに逆流しそうな彼への気持ちをひたすらちぎりとっていった。
そうこうしているとストーリーを見た次の週にはもう彼とは普通に話せるようになり、あんなに必死に送っていたLINEもなくなった。
今となってはLINEが来たら「ウェッ」となるレベルでまあまあ仲良く(?)しているし、あまりSNSで人と繋がるのを嫌がるタイプなのだが私のインスタのストーリーやらはチェックしてくれているらしく、以前に友達の前で『恋人になれないんだったらせめて彼に信頼してもらえるような友達になりたい』とぼやいていた願いも叶ったのだと今となっては思う。
だがしかし、そいつには告白したわけでも振られたわけでもない。
なのになんで振られていないそいつは諦められて、きっぱりと振られて『復縁も無理』とまで言われた彼のことは諦められないのか。
「もう一回ちゃんと別れ話をしましょう」
そうLINEを送ったのは2週間前。
その頃急に彼のリア垢のTwitterの更新頻度が今までにないほど上昇しており、また私は超ヘラっていた。
インスタのフォロワー数が変化しているのを見るたびに「彼女ができたのか」「他の女の子といい感じなのか」と考えれば考えるほど苦しくなり、仕事であろう日の朝にLINEが返ってこなくても、休みであろう日に朝にLINEが帰ってきても、私以外の誰かと誰かと迎える朝を想像して涙が止まらなかった。
終いには夜中に酒を飲みまくりその勢いで「彼女ができたら教えてください」「じゃないとあなたのことずっと好きだから」ともLINEしてしまった。
もう「まだ俺も好きだよ」なんて帰ってこないことはわかりきっていたのに、その返事が「できたら言います」とだけだったのが余計に悲しかった。
私たちはちゃんとした別れ話をしていない。
私の住んでいたマンションに同じ学校の生徒がいるから、という理由で「一度関係をリセットしよう」と言われて別れることにした。そうなるのも私が望んだことだった。
朝、目が覚めて隣で眠る彼を愛しいと思うと共に、いつも後ろめたさで心が破裂しそうだった。
気持ちを優先して付き合い続けたとして、万が一バレた時に彼が非難されるのが嫌だったし、私のせいで首になって欲しくなかった。
初めてバイト先に来たときに彼はもうすぐ転職したいと言っていた。
だからこの関係が変わればまたすぐに付き合えるのだと思っていた。さも当然のように。
だから「転職するまで待つから、卒業するまで待つから、また付き合えるでしょ?」と告げて「『はい』って言えるわけないじゃん」と言われた瞬間、『話が違う』と思った。
じゃあなんのために、私はわざと別れようとしたんだろう。
こうなることがわかっていたらもっと一緒にいたのに、もっと好きだって言ったのに。
まだ行こうって言ってくれてた水族館に行ってない。
作って欲しいって言ってくれてた朝ごはんも作ってあげれてない。
セックスだって、まだ一回しかしてないのに。
私のぬいぐるみを枕がわりに寝る彼のために、物心ついた頃から使っていた枕を捨てて2人一緒に寝れるような大きな枕を買った。
抱きしめながら寝てくれる彼がいないシングルベッドは前より広くて寂しかった。
換気扇の下でタバコを吸う彼のために置いていた灰皿をいつまでも片付けられなかった。真似して私も彼と同じ銘柄を吸い始めた。
ずっと私だけの部屋だったのに、彼と私のための部屋に作り替えようとしていた部屋に1人取り残されているのが耐えられなかった。
何度LINEをしても、何度電話をしても、元にもどらない。
ちゃんとした別れ話も結局ちゃんとしないで終わってしまった。
別れてから私がぎゃんぎゃん騒ぐ度に彼は私の気持ちがどうしたら落ち着いてくれるのかを考えながら、駄々っ子を嗜めるように言葉を選んで接してくる。
それが私の未熟さを思い知らせてくるようで惨めな気分になる。
「年上の方が合ってるから」なんて言ってたけどなんでそんなに露骨に子供扱いしてくるんだろう。
なんで傷つくのがわかっているのに何度もまた彼と話をしようとしているんだろう。
彼が自分の気持ちを言ってくれないことなんてわかってんのに。
どうしたらこの気持ちが冷めるんだろうと思いつつも覚めてほしくない自分がいる。
ずっととか永遠とかありもしないことがわかっているくせに死ぬまで彼のことを好きでいられたらいいのになんて馬鹿なことを考えてしまう。
きっとこんな気持ちのまま、また付き合えることはなくて、私が懇願したらセフレにはなれるのかもしれないけど。
でも、私は彼と結婚したい。ずっと一緒にいたい。
どうしたらいいんだろ。子供っぽいわがままばかり言ってるけど、早く大人になりたい。
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