drip
鈍色の空が
創成の機会を与えてくれた
目を伏せていたものは
見えなくなったけれど
脆弱な陽が
雲の隙間から射し込むと
少しずつ形を変えて
滴となって落ちていく
異世界の終焉の始まりは
いつだって物悲しく
卑屈で嫌らしい世界が蘇る
煙草の煙が天井の色を変えてから
煌々と照らす蛍光灯が醜く
身動きの取れない身体に
繋がったチューブから
カタカナで綴られた液体が
滴となって落ちていく
瞳から溢れた滴は溜まらなくて
余りにも静かで
惨めな出来事で
秒針の音のように
心の奥深くに響くから
目を瞑り 耳を塞いだ
真っ白いフィルターを広げて
安堵の香りを嗅ぎながら
消えてしまいそうな煙を揺らせて
温もりを求めて注ぐ
少しでもそのフィルターで
僕の不純物を取り除いて欲しい
そう願いながら
黒い滴を見つめる
やがて僕の鼓動と重なる頃
胸に滴る想いが沁みて
逢いたいと思う時
あなたはいない