現代インド考察
現代インドは1991年に始まった
インドは独立後、40年の失われた時期を経験します。ネルーとインディラ・ガンジーのフェビアン社会主義は、貿易や外国資本を否定して自給自足を目指し、公営企業により大部分の生産を行う計画経済でした。規制が多いため、賄賂も多く、さらに公営企業は非効率。結局、独占公営企業の幹部にだけ富が集中したうえに、対外債務が返済できなくなり、IMFと世界銀行による経済の自由化が行われました。
現代インドは、1991年に始まります。社会主義経済から自由主義経済へと経済政策を転換し、それまで1%程度だった成長が、おおよそ7%の成長を毎年つづけていくようになります。非効率な公営企業の民営化、外国資本の自由化や関税の引き下げ、規制の緩和により、ITサービスが特に発展をします。
約12%のインド人が英語を話す利点をいかし、USのコールセンター業務からスタート、その後、ソフトウエア開発が盛んになります。規制緩和以前から、インド人はUSに進学し、シリコンバレーで起業したり、就職をしていたことも土台になりました。Y2K問題による特需で、USとの時差を生かした24時間働けますシステムで、成長をとげます。また役人がITに無知であったために、規制もかけられず、結果的に賄賂も減りました。
わが国においても朝鮮戦争という特需によって経済成長した歴史があり、特性は異なりますが、似たような経験をしているのだなと思います。
アドハーシステムとデジタル化が成長の基礎となった
2009年、インドはアドハーシステム(Aadhaar)を導入しました。これは我が国のマイナンバーと同じコンセプトで、システムはNECのものを使っているそうです。
13億人のいるインドでは同姓同名も多く、本人確認が大変です。アドハー以前は、本人確認ができないので、銀行口座ですら、みんなが持っているわけではありませんでした。税金も3%程度のひとしか納めていませんでした。さらに、貧しいひとへの補助金は、銀行口座がないため、現金手渡し以外に方法がなく、でも本人確認ができなかったり、給付される金額の情報も得られないために、中間搾取が横行していました。現代インド人はこれらをアドハーによって解決したそうです。
わが国には、明治の人たちがつくってくれた世界に誇る戸籍制度があります。立憲共産党のような左翼連中がそれを壊そうとしていますが、守っていかなければなりません。
また、マイナンバーで悪事や出自がばれるのを恐れる声だけ大きい一部の人間やマスゴミ、電子カルテさえできない医者などがデジタル化を邪魔していますが、政府にはそれらを跳ね返して、速攻で世界に誇れるシステムを作ってほしいと思います。
アドハーは消費意欲もサポートする
アドハーによりクレジット機能が実現し、多くの人がローンが組めるようになったため、旺盛な購買欲が喚起され、かつデジタル化を進めたことで、これまで採算合わなかった少額ローンも数の力でできるようになったそうです。
デジタライゼーションは、ローンに加えて、融資、投資、資産運用などの金融産業も発展させ、補助金の公正な分配を通して、農業も発展させています。
2017年には各州で異なっていた関節税もGSTで税率を統一し、州境での徴税による物流の遅れや停滞による農産物の腐敗を減少させています。
カーストよりもジャーティーが社会につながっている
カーストは厳格な身分制度で、いくら頭良くても上位カーストじゃないとどうにもならないと、中学校くらいで習いました。しかし、実態は違うようです。
カーストは、僧侶、教師であるバラモン、地主、武士であるクシャトリア、ビジネスマンであるバイシャ、農民と職人のOBC (other backward caste, シュードラ)、不可触民ダリット、部族民トライバルで構成されます。
1949年に憲法でカーストは禁止されましたが、社会には存在します。バラモン、クシャトリア、バイシャで人口の15%を占め、OBCやダリットなどでのこりの85%を構成します。大学などではバラモン、クシャトリア、バイシャで、これまでほぼ独占されていたため、現在では、大学入学定員や公務員の50%をOBCとダリットに割り振る優遇策がとられており、解消を目指しているますが、バラモンなどからは逆差別だという意見もでているそうです。
カーストよりも生活に密着している区別に、ジャーティーがあります。職業や地域、民族などのコミュニティで、社会に強い影響を及ぼしています。カーストはコミュニティではなく、おおまかな分類なのに対し、ジャーティーは、同じ職業や地域、出身などのグループなので、結びつきが強く、自然に人付き合いもそのなかで行われるために、社会への影響は大きくなります。ジャーティーの9割はビジネス関係です。しかし、IT系では、ジャーティーさえも、すでに気にされないものになってきています。
思い返すと、会社のなかでは、確かにカーストのカの字もありませんでした。取引先との会話でも同様でした。インド人のごく一部としかつながりはありませんが、少なくとも我が国で教育されているインド社会を鵜呑みにしてはいけないことは、間違いないでしょう。
UKを抜いて世界5位の経済大国
インドは2022年、ついにUKを抜いて世界5位の経済大国になりました。これは誇るべきことで、長い間搾取し、発展をさまたげてきた、かつての植民地主義のヨーロッパ諸国との逆転の始まりになってほしいと思います。同時にわが国も負けてはいられないという決意をもって競争をしてゆく必要があります。インド人は、自分のやりたいことを主張しつづけ、やり遂げる意志を感じさせます。やらない理由をもっともらしく挙げることはあんまりありません。現代の日本人に欠けている要素の一つだと思います。