ゆるり、令和の大和撫子を紡ぐ
たしか十三参りのころ。
母に着付けてもらったお着物は、桐箪笥に閉じ込められた時代のかさなりを感じさせる匂いがしました。
羽織ったときのずしりと肩にかかるその重みと匂いに妙に心が踊り、帯を締めると背筋がしゃんと伸びて心地よく感じました。
着物を纏うわたしは、なんだか特別な存在になれたような、魔法にかかったような、そんな気がしたのでした。
初めまして、橘 凜々子です。
文頭にあるのは、中学生のわたしが初めて自分から「お着物が着たい」と母に頼み込み、着付けてもらったときの記憶です。
このときの高揚感は、今でもきらきらとわたしの中で残っています。
お着物がきっかけだった日本の伝統的なものへの興味は、祖母や母の影響ではじめた茶道や日本舞踊、合気道など様々な経験の積み重なりで、その後どんどん膨らんでいきました。
伝統文化にすっかり魅了されてしまったわたしは、「もっと知りたい、経験を積みたい」という一心で、京都の老舗旅館の仲居として修行を積むまでに。
そこから今のお仕事を志すようになり、上京して一年以上が経ちます。
世間知らずだったわたしにとって、東京はよくも悪くもとっても刺激的な街でした。
出会う人も環境もこれまでとガラリと変って、楽しくもめまぐるしい日々。
この間も、ずっと相も変わらず日本の伝統文化が大好きで、何度も救われてきました。
上京したばかりの頃、なれない環境での一人暮らしに体調を崩しがちだったわたしの身体を整えてくれたのが和食。
張りつめた心を和らいでくれたのが、お稽古事を通して四季を楽しむことでした。
そしてすぐ引っ込みたくなってしまうわたしに、自信を与えてくれたのがお着物です。
いつしか先人の暮らしの知恵がつまった、伝統ある「衣食住」の文化が自分の中で特別に心を打つ存在であることに気づきました。
時代を超えて伝わってきたモノや慣習には、それだけ多くの人の想いや手が込められています。
旬を重んじ、物をよく手入れして、始末よく使われる。自然との調和がとれていて理にかなっているので、美しくて肌なじみのいいものばかり。
そこにはなにか宿るものがあり、触れているとより愛おしく、いつもわたしの心に豊かさをもたらしてくれました。
日本の伝統的な暮らしの文化には、いつもよりちょっと素敵な毎日を過ごせるヒントがたくさん詰まっているように思っています。
とっても便利でスピーディーな現代。
あえて手間と時間をかけてお着物を着付けたり、出汁を取るところからお料理したり、職人さんの手仕事をお手入れする時間は、無駄なものとすることもできます。
ですが手間をかける時間そのものが、案外良い気分転換になることも。
頭で考えるより先に身体が動くような、日々繰り返す着付けや家事などの作業は、わたしにとっては瞑想のような時間になって、心身のバランスを整えてくれたりしています。
便利さは、心身の健康や幸せを保証してはくれません。
伝統が続いていることには、それだけの理由があるなぁと感じています。
生涯をかけてこの文化を守ることに何かしらの形で携わっていたいと思うようになりました。
元々はこの「まもる」に対しては、自分の中に大切にしまって満足しているタイプです。
でも最近は、この「まもる」の中の継承する、という意味合いの大切さを感じています。
包み込むことで守れるものもあれば、誰かに伝え広がりを持たせることで守ることもできて、後者が今の時代最も力があるのではないかと思い、
小さな一歩でも挑戦してみたいと、このnoteをはじめました。
わたしには中学生の頃からずっと変わらない理想の人物像があります。
昭和映画のヒロインとして出てくるような古風で上品な“大和撫子”と言われるような女性です。
ちょっとした季節の変化や日常にある美しさに気づく心の余裕があり、物腰がやわらかくふとした立ち居振る舞いが美しい。それでいて自分の中には芯があって行動力もあるしなやかで強いひとです。
妄想の中のその人を、わたしは「令和の大和撫子」と呼んでいます。
“令和の”としたのは、それぞれの方がもっている大和撫子の正解に縛られたくないと思ったからです。
そのひとって、どんな暮らししているんやろう?
そうありたいなぁという妄想が、わたしの日々の選択の基準のひとつになっています。
ところが。残念なことに、気がつけばわたしは結構ガサツで適当な人間でした。笑
「うん、まぁええや」という言葉と共に生きています。
おそらく大和撫子の素質はありませんが、
最近はそのままでもいいのかもしれないと思うようになってきました。
わたしのなかの令和の大和撫子は、日常を誰よりも楽しんでいるひと。
だから、なりたいと思っている本人がしんどくならないことが一番大事かなぁ、と。
ゆるーく目指す、令和の大和撫子。
伝統とは従来の文化の上に「今」を付加し、未来に受け継いでいくことだと、誰かが言っていました。
正しいとあることを真似していくことから始めて、学び、現代の生活に合うように取り入れてアップデートしていきたい、という気持ちも込めています。
知っていれば日常がちょっぴり豊かに、見えるものが変わってくるような、
わたしが思わず「うふ、」とにやけてしまうときめきのやまない伝統的な衣食住の文化。
知識が豊富というわけではありませんが、たくさんの方に知ってもらいたいという気持ちはとっても強くあります。
道端の草花は、名前を知らなければただの雑草で気にも止めない存在ですが
知っていればタンポポやぺんぺん草として、季節の訪れを知らせてくれる癒しになります。
これまでの旅館での経験やお稽古を通して感じたこと、学んできたこと、そしてこれから出会い、試行錯誤していく過程を発信していきたいと思っています。
私には秀でた見た目があるわけでも、特技があるわけでもありません。
それでも誰かにとって魅力的でありたいし、そんな自分を好きでいたい。
日本の伝統文化はいつもそんな私の背中を押してくれる存在でした。
だから、みんなにも知ってもらいたい。
日常がより楽しい、より良いものになるきっかけになれれば嬉しいです。
拙い文章ですが、たくさんの方に届きますように。
徒然なるままに、まにまに。
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