やまぐちりりこ
道端でみかけた草花の写真と、ほんのひとことふたこと。
短いエッセイ
叙情
幻想
BGMのない しずかな朗読です
きょうのよかったこと まんてんのほしぞらのような ひめつるそばをみかけたこと うつむいたしせんのさきに やさしいせかいがあったこと
秋の日に、草あそびをした。 かったまけたと笑いあう。 だれひとり泣くもののいない、夢の跡。
じぶんのかげと たたかっているような かまきりをみて わたしの ふあんも げんそうなのかもしれない と おもってみる あきのごご まぶしいひかりを からだじゅうに あびながら
機嫌のよさそうな花をみて わたしもすこし ご機嫌になった 蝶が花粉をはこぶように ご機嫌がとどけられないものだろうか たとえば とおりすがりの みしらぬだれかに
晴れてうれしい。 秋がうれしい。 暑くなくて寒くなくてうれしい。 風がさらさらしててうれしい。 金木犀の香りがうれしい。 洗濯物がかわいてうれしい。 雲がながれてうれしい。 生きててうれしい。 いつか死ぬのもうれしい、たぶん。 全て世はこともなしとはいえないけれど、それでも。 きょうという日に祝福を。
ひこうきが とんでいた あるくはやさと おなじくらいに ゆったり とんでいた わたしたちは しばらく いっしょに さんぽをした とおくとおく はなれていることで なかよくなれることが あるのね
さきのほうばかりみて どこかにおきざりにしたきもちはありませんか そんなこえがきこえてきて すこし たちどまる といのような こたえのような わたげが しんと たっている
からすうりをながめていたら、すいこまれそうになった すいこまれてもいいような気もするけれど、そうもいかない そうもいかない理由を いいわけのようにひとつふたつかぞえてみる またこんどねと、からすうりとわかれたが あたまのなかがからまわっている もう、とらえられているのかもしれない
てのひらを ぎゅっとして にぎりこぶしをつくったら なにか たいせつなものが そこにかくれているようなきがした なきながら このよにうまれてきたとき にぎりしめていた なにか たいせつなもの
まっすぐに空だけをみている だから 空のなかを生きているのかもしれない
公園の東屋で、雨宿りをしました。 東屋の脇には、池がありました。 雨粒が池に落ちると、○ができます。 小さな○は、さあっと広がり、どんどん大きくなって、もうここまでとなると、池に飲み込まれます。 雨粒たちの、わあわあとはしゃぐ声。 だれがいちばん大きな○を作れるか、競争しているようでした。
宝石のようなあまつぶをみつめていたら いつのまにか耳をすましていた 耳をすましていたら いつのまにか 心がしんとして 世界に音楽がふってきた まだ五線紙につかまえられてない 音になる前の音楽がなりひびく わたしはなんでもないかおをして あるくふりをしながら 地球のうえで ステップをふんだ
きょうはやけに空がひろいなと思ったら、日傘をさしていなかった。 こころも、こんなふうにがばっとひろがったらいいのに。 いつのまにか、なにかで覆ってしまっているかもしれないから。
だれかにとっては きぼうで だれかにとっては なぐさめで きおくのいりぐちで ひみつのはけぐちで あるひの わたしにとっては こころをしずめる ゆきでした はなは そこにいるだけで
空がこぼれてきたような はなびらの青は 空の青よりも 青くて そのむこうには 無限の宇宙がひろがっているのかもしれない
かぜが きんもくせいのかおりを はこんできた たしかに とどきました ハンコのかわりに ほほえみを