名前のないギフト
「明日から入院です。早いほうがいいと思います」
突然の宣告でした。
年明けから体調が悪く、最初はかかりつけの内科で腎盂炎と言われていました。
でもなかなか熱が下がらず、時節柄PCR検査を病院に行く度に受けることに。
ようやく熱が下がったと安心していたら、今度は足の付け根からももの後ろに痛みが走り、今度は「座骨神経痛」といわれ整形外科へ。
総合病院の整形外科でMRIを撮り検査した結果「うちの科ではない」と言われ最終的には「脳神経内科」へたどりつきました。
「即入院」と言われたのが、4月の後半なので、体調不良から4ヵ月が経っていました。
入院して数日で「全身性自己免疫疾患」とのことで、全身の末梢神経が炎症しているとか。。
私自身は当初「座骨神経痛」と言われた足の付け根やもも、ふくらはぎの痛みだけで、でもそれは痛み止めの薬で抑えることはできていたので、なんの苦痛もなく不思議な気持ちで聞いていました。
ただ両足に痺れがあり、歩行が少し困難になっていたくらいです。
のちに言われた正式な病名は「好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(指定難病45)」
ステロイドの点滴を3日間して、その後グロブリンという薬を5日間点滴しました。
このグロブリンという薬は、献血で集めた血液から作られているものだと看護師さんから聞きました。
1日300ml、ベッドから見上げる3つのボトル。
5日間で1500ml。
「いったい何人分の血液なんだろう」
私は献血なんてしたことないのに、今こうして、たくさんの人の善意で命をつないでいる…
ありがたくて感謝しかありませんでした。
私は自己肯定感の低いほうで、自分は価値のない人間だと思っていました。
だから、長生きをしたいと思わないし、できれば早く死にたいとすら思っていました。
でもそんな私が知らない人たちに救われている。
なんの見返りも求めずに。
私の病気は「指定難病」ですぐ命を取られることもないけれど、必ず完治するという見通しもたっていない。
1か月後に退院してからも通院は続き、強い薬も飲み続けています。
相変わらず痺れの残る両足を抱えながら思うことは、このたくさん人からもらった「名前のないギフト」を、次はいったい誰に渡せばいいのかということ。
今はまだその糸口すらつかめずにいます。
それはそんなに構えなくても、日常の中に普通にあって、知らないうちにお返しできているのかもしれないものなのかしら。
今の私には「人生100年時代」なんて言葉は絵空事でしかないので、なんとか早めにバトンを渡すチャンスに巡り合って、私の命を助けてくれたたくさんのみなさんの思いをつないでいけたら嬉しい。